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>>02

SIDE シオン



エリックとジーンが闘っている同時刻、シオンとアルバも対峙していた。

「……女か……つまらん。エリックと殺りたかった。……女、せいぜい良い声で啼くんだな。俺の名はアルバ。同族は俺の事を『漆黒の殺し屋アルバ』と呼ぶ。覚えなくて良い。どうせ、お前は死ぬのだから」

「俺をなめるな。俺は『神速の龍』ディライアのシオン。そう簡単には死なない! 行くぞ!」

シオンは大剣アルヴァイオを手にアルバを斬り込んで行くがアルバの体を捕らえる事無く空を切った。

「どうした。これがお前の力か?」

いつの間にかアルバがシオンの背後を取り短剣を突き付けていた。

「俺をなめるなと言っただろ?」

そう言った同時にシオンはアルバに足払いをかけ転ばせると、馬乗りになり剣を突き付ける。

「意外とやるな。だが、貴様のような人間にこの私がやられると思うか? 『風よ、鋭き刃となり舞い踊れ エルウィンド』」

突風から顔を守るように腕で覆い耐える。暫くすると風が止み、押えていた筈のアルバの姿がなかった。冷静にアルバの気配を探すが辺りにアルバの気配はない。

「くそっ、どこへ行ったんだ……っ!?」

言うか終わるといないか、シオンに向かって数本の矢が飛んできた。それをアルヴァイオで切り払うと飛んできた方向に目を見やると、翼を羽ばたかせアルバが左腕をこちらに向けていた。多分その左袖にスパイクを打ち出す仕組みがしかけられているのだろう。

「なっ……鳥の翼?」

「ほぅ……お前は獣人を見たことがないのか? まぁ、地球にいる獣人は殆どが普通の人として生活しているからな。エリックはお前達に教えなかったのか? 獣人である事を……では、あの事もアイツは教えていないな」

「あの事?」

シオンの呟きを聞き取ったのかアルバがシオンに近づいた、それもアルヴァイオの軌道ギリギリの所まで……。

「エリックがお前達に隠しているには二つある。一つはアイツが暗殺者だという事」

「エリックが……暗殺者!?」

「そうだ、空族の族長の下にいる使用人は全てと言っていいほど暗殺者だ。俺を含めてな。だが、エリックは不作品でな。途中で使い物にならなくなったんだ。族長の家系に生まれてなかったらアイツ、義父親に殺されてた……ククク、愉快だろ? それと、もう一つあいつが隠していた事は……」

アルバの声を遮るように一本のナイフがアルバの翼に深深と突き刺さっていた。アルバは何事もなくナイフを引き抜くと飛んできた方向へと視線をやる。そこには二本目のナイフを構えたエリックが立っていた。

「エリックか久しいな。相変わらずナイフの扱いが上手い。恐れ入る。その様子だとジーンはしくじったか……」

「黙れ! アルバ……貴様、シオンに私のことを……」

「あぁ、話したぞ。『殺せぬ暗殺者』貴様のコードネームが泣いているぞ。このような屈辱的な肩書きを貼られて」

「貴様……殺す……殺してやる!」

「エリック、やめろ。アイツは俺の獲物だ!」

「放せ! シオン」

二本目のナイフを放とうとしたエリックの腕を押え、怒りを潜めている目で睨みつけられてもシオンはエリックの腕を放さなかった。

「何、自分を見失っている。いい加減に目を覚ませ!」

諦めずシオンを腕から引き離そうとしているエリックの顔を思いっきり殴り付けると、ゆっくりとだがエリックの目に落ち着きが戻って来た。

「シオン、悪い事は言わない。止めておけ、アルバは危険だ」

「何、心配すんな。十分もかけない」

「ほぉ、はたしてそう……!?」

余裕そうに笑みを浮かべるアルバだが再び右翼に訪れた痛みを不審に思い、右翼に目をやるとエリックのナイフとは別のナイフが突き刺さっていた。忌々しそうにシオンを睨み付ける。

「何を……した」

「そのナイフの刃に少しに細工をしたんだ。毒という細工をな」

「馬鹿……な」

ガクッと方膝をつき苦しそうに息をするが時が経つにつれ意識がかすみ、そのままアルバは倒れこんだ。

「あのアルバをこんな短時間で……シオン、一つ聞いて言いか? アルバに使った毒とは……」

「対リオン用に持ってる毒。何、死なないよ。ただ、一時的に意識を失わせ、目覚めても数分体が動かないぐらいだ……エリック。俺はコイツから何も聞いていない。いつかお前の口から聞ける日が来るのを待つ。さぁ、帰ろう。エリック、ヨーロッパへ」

「……そうだな。帰るか。シオン疲れただろう? 掴まれ。下まで連れていってやる」

エリックは背中の翼を広げ、シオンのてを取ると下へと向かう。





ACT.28 知らされた、過去 END



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