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知らされた、過去

SIDE エリック



本来なら静かである山の頂上に、剣戟音が響き渡っていた。

「腕は落ちてないみたいだな。安心したぜエリック」

「そう言うお前は弱くなったんじゃないか?」

余裕の笑みを浮かべ相手を蹴り飛ばすと素早い動きで袖からナイフを数本取り出すとジーンに向かって投げるが、ジーンは翼を広げ空へと逃れた。

「どうしたエリック。俺が弱くなったと言っときながら、お前は飛び方も忘れたのか!」

その言葉にカチンときたのか、エリックは翼を広げ空へと舞いあがる。その様子にジーンは口端を吊り上げた。

「掛かったなエリック!」

その瞬間、風の動きが変わりエリックの周りに突風が吹き荒れ、エリックは体勢が整えられず地面に向かって落下する。慌てて風の呪文を紡ぎ、地面に激突するのは免れた。

「不思議そうだな。教えてやるよ、この辺りの風はお前達が来る前に俺達が支配した。先程、お前を守った風には驚いたが……賢いお前ならどう言う事か分かるよな。そうだよ。お前は俺に打つ手がないんだよ!」

ジーンは笑いながら自分が支配した風を使い、エリックを切りつけてくる。それをエリックはかわし続け、なんとか急所は外しているが所々血が流れ限界を感じたのかエリックは方膝をついた。

「はぁ……はぁ……」

「もう、ダウンか? だったら後はアルバがあの女を倒してくるのを待つだけだな。そうしたら遠慮なくお前ごとグリフィード様をウェネスト様の元に連れていける」

肩膝をついたエリックに気をよくしたのか地面に足をつけエリックに近づく、それを狙っていたのか。ジーンが近づいた直後、エリックは彼に足払いをかけ彼を転ばすと彼の上に跨り、首元にナイフをつき付ける。

「私の勝ちだな、ジーン」

「……エリック、前言撤回するぜ、お前は弱くなったよ。その目、昔のお前じゃねぇ。昔のお前はこんなに甘くはなかった……甘さは油断を生む。こんな風にな!」

ジーンは己の近くにあった砂をエリックに気付かれぬように握ると、言い終わると同時に握っていた砂をエリックに投げ付ける。その行動に対処できず砂が目に入ったのかエリックの押える力が弱まり立場が逆転した。

「だから言ったろ? 甘さが隙を作るって」

エリックの首をゆっくりと絞めながらジーンは愉快そうに笑う。

「くっ……」

(もう、打つ手はないのか……)

薄れ掛ける意識の中ふと、聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

『どうした、マスター。汝の力はこの程度なのか? 我は言った筈だ。我が力が必要な時は我が名を呼べと』

「……リ……ド」

「なんだ!」

エリック呟きに反応してか、自分達が支配していた風がエリックを守るかのように吹き荒れ、ジーンはその突風に耐えきれずエリックの首から手を離し、エリックから距離を取った。

「ゲホッゲホッ……『新緑の守護者 グリフィード』グリフィード神、この地の風をもとに戻してくれ」

『分かった』

エリックの命令にグリフィードは頷くと自分の力を使いジーン達の支配を断ち切り、フワリとエリックの隣へと佇む。

「馬鹿な。何故、グリフィード神が……」

「ジーン、油断は命取りだぞ」

エリックはありえない、と自分たちの守護神を見つめるジーンの後ろに回りこみ首に手刀を叩き込んだ。

「馬鹿な……この俺が……負ける筈が……」

「負けは負けだ。くそっ、意外にも手間が掛かったな。シオンは無事だろうか……」

『シオンというのはアルヴァイオのマスターの事か? それだったら、我が知っている。マスターが望むのなら案内しよう』

「頼む」

エリックの言葉に頷くとグリフィードは一羽の鳥になり、エリックを先導する。



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