SIDE エリック
ロシア軍事基地。
その中の医療所から悲鳴らしき声が上がった。
「痛いです! ドクタークロフト」
「訓練だと思って甘く見ていた君が悪いんですよ。いくら意思があるとはいえ、訓練用に造られたロボットです。下手をしたらこんな怪我では済みませんよ。ラシュヌ少尉」
最後に腕に巻いていた包帯をきつく縛るとラシュヌは飛び上がった。
「怪我人なんですから、手加減してくださいよ〜! ドクタークロフト」
「訓練を甘く見ていた君が言うのですか、ほら、そろそろ講義ですよ、早く行かないと中佐に怒られますよ」
カルテにラシュヌの症状を書き込みながら言うと、ラシュヌが時計を見て叫び声を上げた。
「あ〜! 何でそれを早く言ってくれないんですか!」
ラシュヌは上着を引っつかんで医療所飛び出ていった。ラシュヌが出て行くと医療所に備え付けられている水晶が音と共に光りだした。
「はい、エリックです。……何のようだ、シェリル……私用でこちらの世界に電話をよこすな」
エリックは外出中の札を掛け内側から鍵を掛けて水晶の元に戻った。
『クスクス、相変わらず真面目ですね兄上。父上がそろそろ定期連絡をして欲しいとの事です』
「分かった。暫くしたら連絡する」
電話を切ろうとすると電話から楽しそうな声が聞こえた。
『クスッ、私達、クロフト家の名誉を汚さないで下さいね。エリック義兄様?』
「お前に言われるまでもない!」
怒りのままに水晶の電源を切った。
ドアの鍵を解除し、札を外すべくドアを開けると一体の兵士型ロボットが立っていた。
「何か用ですか?」
「ドクタークロフト。今すぐ執務室へと向かってください。ダンバッハ総帥がお呼びです」
相変わらず表情がなく淡々と物事を伝える彼等、だが、そんな事はロシアに住んでいくうちに慣れてしまった。
「わかりました、すぐに向かいます。では失礼」
ロボットと別れた後、今一度ドアに外出中の札を掛け、真っ直ぐ執務室へと向かう。
ロシアのこの基地を預かっているのは最近、有名になってきた貴族ダンバッハ家と縁のある者だった。
総帥はもう若くはないが部下一人一人の力を分っているので、いつもベストな役割を当てる為、人望が厚かった。
「エリックです。ダンバッハ総帥」
「入りたまえ」
中から低い声が聞こえ中に入ると総帥は扉に背を向けるように立っていた。
「総帥、私に何のようですか」
「丁度、二日後に私の孫娘の誕生日パーティーがあるのだが、私ももう若くない。そこでもしもの時の為に軍医である君に付いて来てもらいたいのだが」
構わないか、と訊ねてくるダンバッハ総帥の言葉にエリックは驚きを隠せぬ表情で見つめていた。
「私で宜しければ喜んで」
「そうか、助かるよ!」
そして私はダンバッハ家のパーティーに参加する事になった。
ACT.04 パーティー、参加者 END
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