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>>02

片づけを済ませた戒斗が本を読もうかと書斎へ向かおうとしたときノックの音が聞こえた。

ドアに視線を送ると返事を待たずにドアが開かれた。そこにはブラウンのズボンにコートといったブラウン尽くしの男が立っていた。

「人の部屋に入る時は部屋の主の許可を取るものだろう?」

「済まん、今朝三時に電話した者だが」

声の低さにこの話し方、確かに電話の男だが、いたずらではなかったことに戒斗は面倒臭いな……と思った。

男はズンズンと室内に入り、近くにあったソファーにドッカリ座りこみ、帽子とサングラスを外した。

「しかし、ここは接待が悪い。これじゃあ、いくら名が売れていても客に嫌われるぞ」

見た目三十代後半から四十代半ばのその男は、まるで戒斗を評価するように言って、辺りをキョロキョロと見まわす。

「生憎、家には無礼な客に出す茶はない。それより、何者だ?」

少し無視をされているように思い少々不機嫌気味に戒斗は男に声をかけた。

「おっと、俺はこういうモンだ」

男はコートの懐から名刺を取り出し、それを戒斗に渡した。

「刑事だと?」

「おうよ!」

「だが、これを見る限りお前の管轄は隣街だろ」

「な〜に、刑事カーネンツ様に行動範囲なんか関係ねぇ〜」

随分、いい加減な刑事だな、カーネンツのセリフに戒斗はそう思った。

因みに戒斗の住んでいる街はカーネンツが所属している所とは別の署がある。
他の署に比べれば規模小さいが、街の人口を考えれば妥当なのだろう。

「そろそろ本題に入ろうか、例の件だが考えてくれたか?」

気さくな流れ者刑事カーネンツはふと急に真面目な表情をし、手を組み戒斗を見る。

「あの話は受け入れない」

戒斗はカーネンツの問いに即答すると相手がどう出るか窺った。

「まぁ、今のお前さんならそう言うと思ったよ」

カーネンツは煙草を一本取り出して口に銜えライターで火をつけ一服する。

「たが……真実を知ったらどうかな?」

その言葉に戒斗は眉間に皺を寄せカーネンツを見た。
カーネンツは面白い物を見たように紫煙を吐き出し笑った。

真実とはどういうことなのか。このカーネンツという男はそれを知っているのか。
たかが金持ちのパーティで何が起こるというのだ。

「気になるといった、顔をしているな。教えてやるよ。お前に依頼した……あのダンバッハ家は実は国家が管理している銃や麻薬を大量に密輸してるんだ」

刑事カーネンツは腕を組み戒斗を試すように見つめている。
そんな彼の視線を戒斗は面白そうに口元に笑みを浮かべながら受けていた。

「……何がそんなに楽しい?」

カーネンツは声を殺して笑う戒斗に不審の目をやる。

「最近、面白い仕事が無くて退屈していた所だ。タイミング良くこんな面白そうな仕事が来るとは思わなかった。悪いが、俺はあの依頼を断るつもりは無い」

「てめぇ〜!! 俺の話を聞いていたのか!? これは俺達、刑事の仕事だ。ディライアの出る幕じぁねぇ!!」

カーネンツは戒斗の襟元を掴み睨み付けるが当の本人は涼しい顔をして聞き流していた。

「用はそれだけか? 用が済んだのならさっさと出ていってくれ」

戒斗は襟元を掴んでいるカーネンツの手を引き剥がすと、冷ややかな目で見つめる。
そんな戒斗に溜息をつくとドアに手を掛け一度、戒斗の方を向くと「俺は止めたからな」と、言って出ていった。



ACT.03 刑事からの、忠告 END


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