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義賊、ニルヴァーナ

SIDE 双子



「ねぇ、シオ姉?」

真っ白な月の光が窓辺に立つ一人の少年の影を濃く、長くしてゆく。

「今度のターゲットって近々パーティーをやるらしいよ?」

声を掛けられ、それに気付いている筈のもう一人の影。
名をシオン。義賊集団「ニルヴァーナ」のリーダーを務め“女”である。

「フンッ、ぜーたくなモンだな」
暫らく間を置いてシオンが答えた。

「あくどい金で娘のパーティーか?いい気なもんだぜ」
思いきり不快感を露に呟く。

「あはは……」
その反応に少年――弟のリオンが苦笑い気味に返した。

「多分、娘さんの方は知らないと思うよ? 大体親の金だし」
「そーゆーのが一番嫌いなんだよ!」
鼻を鳴らしてソッポを向くとそれきり何も言わなくなった。

「シオ姉は今日もゴキゲンナナメですか」
クスクスと小さく笑うと彼は部屋を出て自室へ向かった。

「パーティーか、狙いやすい日ではあるな……くわしい事は明日訊く事にしよう」
リオンが部屋を出て数分、シオンは一人小さく呟いた。
そして夜がふけて行く。



翌日の早朝。

「おい、準備は良いか?」

シオン姉弟宅裏口。細身の剣を腰から提げた体格の良い男が手下らしき数人に確認を取っていた。

「ターゲットはリーダー格の二人だけだ。他の奴等は相手するだけ無駄だ。分ったか」
テキパキと確認を取り終えるとドアに手を掛けそれをあけようとした、その時。

「こんな朝っぱらから何のようだ」
屋根上から女の声。

「その様子じゃあ……賞金稼ぎかなんかだな?」
一瞬、男達の頭上に影が落ちる。すとん、という軽い着地音とともに男達の背後にシオンが降り立った。

「全く……人が屋根の上で日の出を拝んでたら話し声がして、来てみりゃあコレだ……」
見るからにウンザリしたオーラが出まくっている。

「昨日は昨日でガセネタ掴まされて挙句に罠に掛けられるしで散々だったしよォ」
シオンが飛び降りたために一番奥のポジションになった体格の良い男がシオンに聞いた。

「お前……ニルヴァーナの一員か? お前達のリーダーの居場所を教えろ、悪いようにはせん……」
その男は確認を取らずに話を進めた。

「リーダーの居場所?」
シオンが男に不思議そうに訊いた。

「手配書はどうした? それがあれば自力で探せるだろ?」

男の眉がピクリと動いた。
「……どうやら俺はマヌケな問いをしていたらしいな」
そういうと剣を抜き放ち仲間に命令した。

「その男を捕らえろ! 奴がシオン=シューグヴェルだ!」
闘争心剥き出しの男達が剣や斧を抜き襲いかかった。

数分後、辺りには地面に突っ伏しピクリとも動かなくなった男達が転がっていた。

「グヌヌ……」
そいつ等のリーダーだった男が悔しさに小さくうめき声を上げていた。

「残念だったな……伊達にこの場所周辺で盗賊やってんじゃねぇんだよ俺達は」

胸の前で腕を組み剣に触れさえもしない。シオンに襲いかかってきた男共は全員蹴りだけで叩き伏せられたのだ。

「ちっ、これでしばらく活動をしにくくなった……余計なマネしてくれたぜ……」

自分の事など意に介していない様子に男は憤り、がむしゃらに突っ込んでいく。
「キサマァァ!」

鋭い一閃。
今にもシオンの軽装を男の剣が突きそうになったそのとき、甲高い金属音が鳴り響いた。

「なにっ!?」

シオンの身長の丈ほどもある幅広の大剣がその一閃を防いでいた。そして男が動きを止めた刹那くるりと大剣を回転させて男の鳩尾を柄で強打した。

「グガッ!?」

男が剣を取り落とす。そして、そのまま後ろに倒れた。

「まだ甘い……その程度じゃ俺は仕留められねぇさ」
地面に剣を突き刺し言いきった。

するとシオンの頭の上の方から間の抜けたパチパチという相手の音とリオンの声が聞こえてきた。
「流石、『神速の龍』だね……シオ姉」

「見てたんなら助けろよ……」

「あはは、ゴメンね……でも助ける必要なかったよね?」

「それは否定しないが、リオンの杖があれば援護ぐらい出来ただろう?」

「ん……? コレ?」
そういうとリオンはヒョイと『弓姫(キュウキ)の杖』を取り出して見せた。

「まぁ、……確かにそうなんだけどね」
リオンの表情は見なくても分る。

「……まぁいい……後の処理と例のパーティー会場の件……聞かせてもらう」
「うん解った。ちょっと待っててね」

暫らくした後、リオンが戻ってきて少し話を聞いた後、各自、解散ということになった。



――パーティーまで後、六日。
リオンはその時、何か大きな力がその会場に来る事を感じていた。



ACT.02 義賊、ニルヴァーナ END


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あきゅろす。
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