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>>02

騎士やディライアが多く住むヨーロッパでは武器を持っている者が少なくはない。しかし、戒斗のように顔の良い男が一人でスーパーにいる姿を見るとやはり目に付いた。

「あらら〜、戒斗さんは一人で寂しくお買い物? 料理を作ってくれる彼女もいないんですか?」

そんな戒斗に声をかけた少女がいた。金髪のパーマのかかった髪をツインテールにして、フリルのついたワンピースを着た可愛らしい少女だ。

戒斗は少女を無視して歩き出した。カゴに次々と材料を入れていく。

「あぁ! ちょっとまちなさいって!」
少女はそんな戒斗の後ろを走って追いかけた。

「……何の用だ、ノエル」

「何って……別に用は無いんだけど。浮いた話の一つもない戒斗さんが可哀想だから、ノエルちゃんが声を掛けてあげたんじゃない」

戒斗はまたまた少女を無視して会計を済ませに行くが――その後、酒を買い忘れた為に再びスーパーの中へと入る事となった。

「か〜い〜と〜、逃げるなんてずるいじゃない!」
スーパーの中に入ると怒りに顔を赤くしたノエルが仁王立ちで待っていた。

「悪かった、許せ。かわりに家まで送る」
このままでは、ノエルが騒がしくなる。それだけは遠慮したいと思った戒斗はあっさりと謝った。

「戒斗ってば話が早くてたすかるわ」
急いで酒を買った戒斗はバイクの後ろにノエルを乗せて走り出した。

南の大通りを西の方へと走り抜ける。
ノエルの家――というかノエルの養い親の家は戒斗の家の反対方向にある。

その男には戒斗も大分世話になっていた。ヨーロッパへ来たばかりの頃に賞金首に襲われた事があった。

その時、ノエルと男に出会った。男は賞金稼ぎだったのだ。

行く先が無いと言ったら「一緒に住まないか?」と誘われ、今の家に移るまで、その男の家で暮していた。
交友関係は続いており、お互い忙しい身だがたまに会って話をする仲だ。

よく知る道を走りながら戒斗は誰も居ない、寂れたビルの前でバイクを止めた。旧時代の面影が残る廃墟に二人は立っている。

「人気者って辛いわね」

何台ものバイクが二人を囲むように止められた。そのバイクに乗るはいかにも悪人ですというような姿をした男達。

「こんな奴等に好かれたくない」
「私もこんなブサイク嫌だよ」

二人が小声で話していると男達が怒鳴り始めた。

「オイ、テメェら! ずいぶんと俺の子分たちを可愛がってくれたじゃねーか!」

リーダーらしき男が剣を片手に戒斗を睨み付けた。この男達は数日前に戒斗とノエル達でたまたま捕まえた賞金首のチームメンバーだったのだ。

「お前らのような男を可愛がった覚えはないが?」
「そうそう。あんた達みたいなブサイク誰が可愛がるのよ!」

「馬鹿にしやがって! お前らやっちまえ!」
リーダーの男の声に合わせて男達が二人に襲い掛かってきた。

戒斗はベルトにさした日本刀を引き抜き男達に斬りかかった。もちろん死なないように手加減をしている。ノエルは純白の翼をひろげて両手を前にかざし呪文を唱える。

「悪しき者達に愛ある女神の裁きを! ホーリーアロー!」
魔方陣が浮かびあがり光の矢が男達に襲う。

男達は次々に倒れ残るはリーダーの男だけとなった。

「あとは……貴方だけだよ」
ノエルはかわいらしく笑うが、その手には魔力が溜められていた。

「ヒッ……たっ、助けてくれぇ!」
今までの勢いはどこへいったのか涙目になり、男は尻餅をついて後ずさる。

ドカッ!

鈍い音と共に男は倒れた。倒れた男の後ろには刀を鞘に戻した戒斗が立っていた。

「雑魚は集まっても雑魚か……」

「でも、塵もつもれば……って言うでしょ。油断大敵よっと、ここからなら飛んで帰るわ。またね〜」

数枚の羽を落としながらノエルは大空へと羽ばたいた。


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