時間的に今は殆ど人がいない戒斗の事務所前の通り。
そこで一人の少女が静かに事務所を見ている。
(ここね)
メモやら何やらが書かれた紙を見て確認しそれをもう一度ポケットにしまい扉をノックした。
突如鳴ったノック音に戒斗以外は驚きドアの方に視線をやった。
「開いている」
ただ一人この事がわかっていた戒斗は外の人物にそう答えると扉が開き一人の少女が立っていた。
「お前が連合の……使いか?」
「ええ」
連合の使者は戒斗とそう歳が変わらない少女だった。
「初めまして、私が連合の使者のレナ=リーベです」
そういうと少女は軽く会釈した。
「あのあなたがディライアの鳳戒斗ですか?」
「あぁ、例の二人も連れてくる……」
「その必要はないよ」
ドアの方から声を聞え二人がそちらへ顔を向けるとリオンが立っていた。
リオンはそのままソファに腰を降ろす。
「僕が巷で有名なニルヴァーナの副頭リオン。それと、頭領は先程、死……」
「リオン!」
リオンの言葉を遮る用に勢いよく扉を開け一人の少女が入って来た。
「あーあ、後もうちょっとだったのに……因みその人がニルヴァーナの頭領シオン。僕の双子の姉です」
「リオン! 勝手に俺を殺すな!」
「別に良いじゃんそっちの方が面白そうなんだから」
わいわいギャアギャアと双子は姉弟喧嘩をやり始める。
その二人を見てレナはどう対応して良いものかと慌てている。
「おい、お前。お前は仕事をするために来たんだろ、さっさとやったらどうだ」
「えっ、あ、はい」
いきなり話を振られたレナは、慌てて頷いた。
(何、こいつ本当に桜さんの息子なの! 似てないじゃない)
憧れの上司の息子が、自分の想像とかけ離れた人物であったことに怒りを覚えた。
けれど、仕事に私情を挟むわけにはいかず、話を進めた。
「それでは説明します。まず、リオンさんとシオンさん。お二人の武器を見せてはくれませんか?」
いきなり話し掛けられた二人は同時に振り返り、驚きの表情を浮かべていた。
「何で俺達があんたに武器を見せなくちゃいけないんだ」
「貴方がたの武器に付いている宝石に神が宿っているかを調べたいのです」
シオンの言葉を聞いてもレナは怯まず言葉を続けた。
「解りました。どうぞ……ほらシオ姉もさっさと出す! 彼女、困ってるじゃん。済みませんでした。さぁ、どうぞ」
リオンはそういってシオンから奪ったアルヴァイオとシャリアムをレナに渡す。
シオンはその光景を見て慌ててリオンに詰めかける。
「リオン! いつのまにアルヴァイオを盗んだ!」
「やだなぁ〜、シオ姉盗んだなんて。シオ姉が悪いんだよ早く渡さないから」
「あの少し静かにしてくれませんか」
口喧嘩をしていた二人にレナの冷たい言葉が入った。
「で、どうなんだ?」
「この二つはまず、間違いなく神が封じられています。申し訳ないのですが、これは連合の方で預からせてもらいます」
そういってレナは申し訳なさそうに二つの武器に封印札を貼り箱にしまう。
「ちょっと待て! 俺のアルヴァイオとリオンのシャリアムを返せ!」
「それはできません。神が封印されているとわかった以上これは我々連合が預かります」
レナとシオンの間に不穏な空気が流れた。
しかもシオンは今にもレナに掴みかかりそうな雰囲気だった。
「それは俺達両親の形見なんだ!」
「しかし、規則は規則ですから……」
「お願いしますレナさん」
レナは少し考えるといい事を考えたのか一度手を叩きシオン達の方に振り向いた。
「では私があなた方をディスオーガナイズに推薦します。そうすればあなた方が持っていても大丈夫ですから」
「……少し考えさせてください」
「リオン!」
シオンはリオンの言葉を認めたく無かったのか声をあらげた。
「シオ姉考えてみなよ。ディスオーガナイズに入れば色々な情報が入る」
「それはそうだが……」
レナは一応とういう事で本部に連絡をとり宝石とリオンとシオンの事を報告するとしばらく話し合いが続きようやく決まったのかレナが電話をきった。
「あなたがたのディスオーガナイズ登録の許可はおりました。後はあなたがた次第です」
「……ディスオーガナイズには入らないが連合に力は貸そう」
リオンとシオンは目を見合わせ頷きあうとレナにそう告げた。
「わかりました。本部にはそう伝えます。ではこれをお返しします。後、戒斗さんにはこれを今回の報酬です。次もお願いします」
二人にアルヴァイオとシャリアムを返すと鞄から報酬を取り出し戒斗に渡す。
「では、私はそろそろ失礼します」
「玄関まで送る」
戒斗はレナより先に立ち上がると玄関に案内する。
「ありがとうございました」
レナは戒斗に一礼すると事務所から立ち去った。
「次の依頼は人捜しか……しかも獣人か、少し厄介だな」
ドアを閉め戒斗は独り呟くとリオン達が居る部屋へと戻る。
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