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考えても、無駄

SIDE ハング



千石時也は研究所の資料庫で異界の扉に関する文献を漁っていた。
数日前に調査したアフリカの消えた遺跡。
そしてそこで拾った魔力を持つ石。
まだまだ分らない事の多い異界について調べる事は時也にとって何よりの楽しみなのだ。

「はぁ……」

溜息をついて時也は本を閉じる。
収穫はなかった。

「あっ、時也君。こんな所に居た」
「サラさん」

不意に背後から声を掛けられ振り向くとそこには同じ研究員のサラが居た。
よく見ると一冊の本を大事そうに抱えていた。

「また読書ですか……?」
「うん、だって好きなんだもん!」
サラは間を置かず即答した。

「それで、何のようですか?」
「ひっど〜い! 時也君。今日、一緒に出かけようって約束してたのに!」

時也はその言葉ではっとした確かに今日サラと隣町まで行く約束をしていたと今思い出した。

「すみません、先生と約束があるので……」
「まったく、時也君は私との約束より、所長との約束のほうが大事だって言うの?」
「すいません」
「な〜んて、いいよ。そっちを優先して。時也君にとってハング所長は憧れの人だもんね」

最初は険しい顔をしていたサラは時也が謝るとあっさり笑顔になった。

「本当に済みません」

サラは気にしないで、と言うと直ぐに資料庫を出て行き、時也も漁っていた資料を元に戻していた。



「おう、遅かったな。時也」
建物を出たときに声を掛けてきたのは自分が尊敬するハングだった。

「すいません、先生。色々調べ事に時間がかかってしまいまして……」
時也は素直に詫びるが、ハングは対して気にしてないようだった。

「ところで、分ったのですか? その場所と言うのが……」
「いや、まったくだめだ」

2人はある人物を探していた。
その人物は地球にいる獣人の中でも、魔力に詳しいと言われる人だ。

“エリック”と陸族の青年に呼ばれている人物しか二人は知らない。

「それで、これからどうするつもりですか?」
「ヨーロッパへ行く。そこには凄腕のディライアがいるらしい。そいつに調べてもらうつもりだ」

「では、僕は独自で出来る事をやってみます」
「あぁ、頼んだ」

ロシアでも東はじにあるこの町から列車でヨーロッパへ行くにはちょっとした旅行になる。
その準備をするべくハングはまだ昼前だというのに家へと帰っていった。





SIDE 戒斗



戒斗は暗い闇の中をひたすら走っていた。

(あのリオンってガキが言ってた通り、足が勝手に目的地へと向かっているのか。わざわざ案内してくれるとはな)

ダンバッハ邸を出て数分戒斗は自分の足が勝手に目的地へと向かっていることに気づいた。

(しかし、何故エフェリオなんだ? まぁ、考えても仕方ない。今はニルヴァーナの二人をいかに捕らえるかだ)

戒斗は走りながら二人を捕らえる計画を考えるが中々良い計画が浮かばない。

「……どうにかなるか」

計画を練るのを諦めて、戒斗は走るスピードを上げてエフェリオへと向かう。



ACT.09 考えても、無駄 END


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