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ディライア、鳳戒斗

SIDE 戒斗



2500年――ヨーロッパに『ディライア』の一人の青年がいた。

青年の名前は鳳 戒斗(オオトリ カイト)、18歳になったばかりの日本人である。戒斗は16歳で単身ヨーロッパに渡りディライアとして働き出した。

ディライアとはいわゆる何でも屋。
この時代では人気のある職種だが、常に危険と背中合わせなこともあり毎年開業する者もいれば辞めていく者もいるという、入れ替わりの早い職業でもある。

戒斗はディライアになってもうすぐ3年目に突入する。それなりに名も広まり、仕事も上手く回り始めていた。



「本当にありがとうございました。また何かあったらお願いしますね」
そしてまた一つ仕事を成功させた。笑顔を浮かべた女性が戒斗の事務所を出て行く。

戒斗の机の上には、紙幣の束が2つ乗せられていた。その大金を目の前にしても表情を変えず、カバンの中に詰め込むと事務所を出た。

バイクに乗り、裏道を猛スピードで走り抜けた。南の大通りの端に戒斗が利用している銀行がある。その銀行の前でバイクから降りると、中へと入った。

「いらっしゃいませ。預金ですね。こちらの紙にお書き下さい」
この数年で顔馴染となった、父親と同年代の男に紙と通帳、現金を預けた。

「相変わらず、すげぇな。俺もこんな大金一度に稼いでみてぇよ」
営業スマイルを止め、男は戒斗へと話し掛けて来た。

「ディライアでもやってみればどうだ? お前に力があればすぐに金も手に入るさ」
口元だけでニヒルに笑い、戒斗は男が紙幣を数え終わるのを待っていた。

「それができねぇからこの仕事してんだ。まぁ、お前さん達が此処に金預けてくれれば、俺達は生きるのに苦労はしないけどな」

「……それなら、次の仕事も成功させないとな」

はじめから居た男にもう一人の男が加わり、数えていたがまだ終わりそうにも無い。
枚数が枚数だから仕方ないかと、戒斗は壁に寄り掛かりズボンのポケットから煙草を取り出して火をつけた。

この時代、16歳で成人となるため18歳の戒斗が喫煙、飲酒は罪になることは無い。
二本目の煙草に手をかけようとした所で男に呼ばれた。

「ありがとうございました。また今度、飲みに行こうぜ?」
「お前のおごりならな。年上は年下を可愛がるもんだろ?」
通帳を受け取りカバンへとしまう。

「馬鹿言え、稼ぐ方がおごるもんだろ?」
「……気が向いたらな」
ヒラヒラと手をふりながら戒斗は銀行を後にした。

残しておいた数枚の紙幣で研ぎ師に預けてあった刀を取りに行った。久々に持つ愛刀の一つは綺麗に磨かれていて自分の顔を写していた。

これが無いと落ち着かないな、とベルトに挿した刀の鞘に手をおく。
ようやく普段の生活スタイルに戻ると今度は夕飯を買うためにスーパーへと向う。



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