SIDE レナ
同時刻。ヨーロッパから西へ、砂漠とかしたアメリカ大陸を超えた太平洋中心部に浮かぶ人工島。連合本部では、ある会議が行われていた。
その会議に出席しているのは各国の代表者、そして連合の最高責任者、科学者達。
その科学者の中には鳳戒斗の母親でもある鳳桜。
そして最年少で科学班に入ったレナ=リーベが出席していた。
会議の内容は神と呼ばれる者達が宝石に宿りこの地球上に存在していること。
そしてその宝石をどうするかを議論する事になった。
何せ神という、居るか居ないか分らない存在だ。
精霊のように姿を表してくれるならまだしも、神は一度も人間の前に姿を表したことがない。
本当かどうか疑わしいが、もしこの話が本当なら早急に宝石をどうするか決めなくてはならない。その宝石が悪事にでも利用されたらこの世界の破滅に繋がるからだ。
数時間に及ぶ話し合いの末、見つけしだい連合が保管するということで会議は終りを告げた。
「見つけしだい、なんて言われてもね……。そう簡単に見つかるなら誰も苦労はしないわ」
研究室に戻るなり机に伏せてしまったのは桜である。
今回の件で責任者に選ばれてしまった彼女は、会議室をでて直ぐ溜息をついていた。
「そうですね。世界中から小さな宝石見つけるなんて、容易な事ではないです。ですが、やらないわけには行きません。鳳責任者、集められている情報の中で信用性のある物からディスオーガナイズ頼みましょう」
久しぶりの大きな仕事にも関らず冷静に仕事を始めたのは、レナ。
まだ若いが実力のある科学者である。
「そうね、レナの言うとおりだわ。誰か事務局からディスオーガナイズのデータを借りてきて」
やる気を取り戻しつつある桜の言葉で一人の青年が部屋を出ていった。
ディスオーガナイズ。
連合に所属していないが、連合の仕事に協力してくれる人物や団体のことを呼ぶ。
世界各国のさまざまな場所に存在していて、その殆どがディライアや情報屋などだ。
今回も彼等に協力してもらい世界中から宝石を探し出そうというわけだ。
机の上に山ずみされた情報を次から次へと目を通し、どんどん絞っていく。
あまりにも数が多い為一つ一つやっていては時間がかかりすぎるという事で、詳しく書かれている物をピックアップしていった。
そして残ったのは5枚。
レナはその中の1枚を手にした。
ヨーロッパにいる義賊ニルヴァーナの頭と副頭の持つ武器には不思議な宝石があるということ、宝石を全て金に替えるのに、武器についた宝石を売らないあたり価値のある物だと思われる。
そう書かれていた。
「どれどれ、レナはそれを当たって見るつもり?」
「……!?」
突然、横から顔を出した桜にレナは一歩、後ずさる。
「じゃあ、そこはレナに任せたわ。私は全体の指揮を取らないと行けないから」
「はい、わかりました」
魔力で動くパソコンで桜はディスオーガナイズのデータを開いた。
レナが場所を答えるとキーボードを打つ桜の手が止まった。
不思議に思いレナは声をかけた。
「どうかしましたか?」
「その場所にいるディスオーガナイズなら調べる必要はないわ。そこにいるのはディライアの鳳戒斗、私の息子よ」
ニコニコと笑いながら話す表情はまさに子供の自慢をする母親そのもの。
以前、自分より二つ上の息子がいると聞いた事のあるレナだったが、まさかディスオーガナイズに選ばれる程の人物だとは思っていなかった為、驚きは隠せなかった。
「息子さんがいらっしゃるのなら私でなく鳳責任者が行くのが宜しいかと」
「だめよ、私事を挟むわけには行かないわ。それに、あの子ぐらいの年だと母親って煩いものじゃない?」
私事をきっちりと分ける辺り流石というべきだろう。
レナはそんな桜を尊敬しているし、彼女の息子であるディライアの少年に会ってみたいと思っていた。
きっと、桜に似た責任感のある仲間思いの優しい人なのだろうと想像を膨らませた。
「わかりました。この件に関して、レナ=リーベが責任持ってやらせていただきます」
「宜しい。ではディスオーガナイズ、鳳戒斗に協力要請のメールを」
連合本部から戒斗へとディスオーガナイズとしての依頼のメールが送られた。
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