SIDE ハング アフリカ大陸の某所、地球の果てまで広がる荒涼の中、遺跡らしき石柱の群れ……。 アルタイルの研究を行っているハングレイブの研究チームは調査の為ここに来た。 「数ヶ月前までは、街の遺跡がそのまま残っていた筈だ。こんな短期間で何故こんな事に……」 ハングは顎に手を当て考え込む。 確かに以前の調査ではこの辺りに数ヘクタール規模の都市の遺跡が確認できた。 それが今では殆ど跡形がない、数十本ほどの石柱ぐらいしか残っていなかった。 「時也……お前はどう思う?」 ハングはメンバーのうち一人、日本人の青年に問う。 「前にも言った通り恐らく異界への扉の影響を受けたのだと……」 「異界の扉に飲み込まれた……。という事だな」 「はい」 時也は小さく頷く。 「ということは、この近くに扉があるという事か」 「そうかもしれません」 地球上の四つの国に異世界でもあるアルタイルに通じる扉がそれぞれある。 しかし、四つの国と数えられている筈のアフリカにはそれが確認されていない。 ふと、ハングは何かに気がつき、その場にしゃがむと足元にある石を拾う。 そして、それをじっくりと観察した。 「こいつは……」 さらに良く目を通すと石は僅かながら光を発していた。 「何だこりゃ?」 「光ってますね。魔力でしょうか?」 時也もハングの手元を覗き込み首を傾げる。 「ただの鉱物かもしれん取り敢えず確かめて見るか」 光が自発している物なのか反射している物なのかを確かめる為にハングは黒い布を取りだし、石を覆ってみる。輝きは消えなかった。 「魔力のようですね」 「あぁ」 時也の言葉にハングは頷く。 「だとするとやはりここが異界の扉だというのか」 「かも知れません。……でも、空間の歪みは感じない。封印されているのでしょうか……」 時也は不思議そうに一本の柱に手を当てる。 ハングも暫らく考え込んだ後だるそうに立ちあがった。 「今ある道具だけじゃどうにもならん。とりあえず今回はこれで引き上げだな」 ハングは調査を続けている研究員に事を告げると引き上げる準備をする。 「これで全員だな。それじゃ、頼むぜ、時也」 「はい」 全員が時夜の周りに集まると時也は転移魔法を唱えるとハング達の姿は遺跡からロシアにある研究所へと帰還した。 「しかし、気になりますね」 「あの石の事か?」 「えぇ」 最初に言い出した時也の話をハングは煙草ふかしながら答える。 「ま、あれが異世界関係だったら、これからの研究に役立つだろうな」 「そうなんですけど、でも、やっぱりすっきりしないんですよ。何故、遺跡がないのか、そしてあの石……もしかしたら、あの石は本当に何かを秘めているんじゃ……」 それをきっかけに二人は立ち止まり何かを考え始める。 「どっちにしろ、あの石の事がわからねぇ以上何とも言えねぇな」 ハングは何気に時計を見ると針は午後六時を指していた。 「もう、こんな時間か。お前は先に帰ってろ」 「え? 先生は?」 「ちょっと、用事がな……。付いてくるなんて野暮なこと言うなよ」 ハングはそう言って時也の背中を強くたたく、それに時也は顔をしかめた。半端じゃなく痛かったらしい。 その後、時也は転移の魔法を唱えて帰っていった。 |