SIDE 双子 パーティ翌日、ニルヴァーナアジト。 「あはは、シオ姉ボロボロだねェ……」 「テメェ……」 真っ白なローブが少し汚れてはいるが顔だけはニコニコと笑う少年が、シオンに声をかける。シオンは何か言おうと口を開きかけたが直ぐに閉じる。 「まぁ、僕が幾らか手に入れたからそれでいいよね」 「……」 シオンは左手で頬杖をついて何も言わなくなる。普段、仕事中を含めあまり喋ることがないがさらに無口になっている。 その様子にリオンは溜息をついて苦笑いを浮かべる。 「そんなに負けたのが悔しい?」 「ん……」 リオンが見かねたのか訊いてきたのをシオンは小さく頷く。 「今まで負けナシ。ここ数年ちょっとで伸し上がりギルドでもそれなりに信用されていたシオ姉があっという間にやられてすごすごと帰ってきた……くやしい?」 リオンはだらだらと今までのニルヴァーナの経緯を呟く。 「嫌味か?」 「……いや? 違うけど?」 リオンの答えにシオンはむっとした表情で訊ねるがリオンはそれを笑って返した。 「……ねぇ、リベンジマッチといかない?」 リオンはさっきの表情のまま意味ありげに提案した。 「……リベンジマッチ?」 「そ、僕はその間にもう一度、あの屋敷に侵入するから」 「……から?」 シオンは怪訝そうな表情をむけリオンに尋ねた。 「シオ姉はあの人を見つけてリベンジマッチ」 ニコニコと笑みを浮かべシオンの質問に答えるリオン。 「……で?」 ふう、と溜息を吐きながらシオンはリオンに訊いた。 「あいつがまだあの屋敷にいる可能性は限りなくゼロに近いだろ? まさか、わざわざ俺からのこのこ会いに行くのか?」 「ん、そだよ。そのまさか」 リオンはそう答えるとデスクから1枚の紙とペンを取り出し何かを書き始めた。 「でも、正確にはあの人を誘き出すんだけどね……さぁて、あの人とシオ姉のリベンジマッチ……何処がいい?」 そして、その紙に何か書き終えるとリオンは見る人が見ればぞっとするような笑みをシオンに投げかけた。 「シャンドリア峡谷か、もしくは……」 「あぁ、あの場所ね、僕的にはシャンドリアの方が良いと思うけど?」 リオンはデスクに座りながら言う。 「いや、エフェリオにしよう。あの場所にはまだ見つかっていない宝と既に見つかってはいるがダンバッハ家の息がかかった作業員もいるようだ」 シオンは少し考えた後そうリオンに返した。 「まさにお誂え向きの場所だね……じゃあ、ついでに屋敷からたんまりとお宝取り返してくるね」 「……三日後に決行だ」 「わーかってますってお姉様」 リオンの満面の笑みが物凄く気になったが問つめた所で笑えないだろう。 しかも、シオンの事を“お姉様”と呼んでいる時の計画にはロクな物がなかった。 リオンが部屋を出た後シオンは一冊のアルバムらしき物を開いていた。中には数枚の写真。 それには全て幼い子供二人と若い二人の男女。多分男女二人は夫婦で子供二人は夫婦の子であろう。 写真の中に写る四人はどれも幸せそうにシオンに笑いかけていた。 「……もう四年になるのか」 その写真を見ながらシオンは呟いた。 「フッ、写真を見て感慨にふけるなんてらしくねぇ……次やって勝てる保証なんてねぇのに……やっぱテングになってたんだな俺は」 自分でも判っているのかシオンは自嘲の笑みを浮かべた。 「ま、悔いが残るよりはマシだ。やるだけやってやる……頼むぞ“アルヴァイオ”次はフルパワーでやる……お前がどうなるか解らん……それでも良いか?」 そのままアルバムを閉じそれをしまうと愛用の大剣を手に取りそれに話しかけた。 すると『あぁ……構わんさ。シオンがそれで満足できるならな……』と、低い呻きか唸りのような声が返ってきた。 「悪いな」 短く礼を言うシオン。 『やはり、悔しいのか……流石に、ああもあっさりとやられてしまってはな……』 アルヴァイオは言う。 『お前にはお前の強さがある……人の強さはそれぞれだ。……しかし、こんな事を言っても気休めにはならんがな』 「いや……いいんだ。俺はやるさ……そんときは“アルヴァイオ”の封印を解くかもしれない」 『その時は“神速の龍”か真価を発起するな』 アルヴァイオは雰囲気で笑う。 「だが封印を解くと“アルヴァイオ”の命は失われてゆく……あまり使いたくは無いな」 『気にするな、一度は死んだようなものだ……大して変わりはせん』 「頼む……」 『あぁ』 最後に一言ずつ言葉を返すと眠りについた。 『リオン、本当に宜しいのですか? シオンは……シオンには勝てる見こみが殆ど皆無なのですよ!』 「ん、いいんだよ」 『……?』 「多分、前よりは良い戦いが出きると思うからね」 ACT.06 悔しさをバネに、再挑戦 END |