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>>04

(本格的に探す前に吸ってくるか……)

戒斗は辺りを警戒しながら人気のないテラスを探す。しかし、何せ人が多いからか既に殆どがカップルや酔っ払いなどがいた。

やっと、人気のないテラスを見つけ扉を開けるがそこには既に先客がいた。
その先客は何もすることなく目を閉じ、ただ風の音を聞いていた。やがて、戒斗の視線に気付いたのか男は戒斗に視線をやった。

「どうかしましたか? 気分が悪いのでしたら薬を出しますが……」

「医者か?」

えぇ、と男は軽く微笑んだ。

その答えに戒斗は納得できなかった。ただの医者が戒斗ほど実力を持つ人間に気配を感じさせずにいられるはずがない。
なのに、この男は戒斗に気配を感じさせなかった。

それに先ほどのメイドと同じようにこの男からも初めて会った気がしないのだ。

「所で、貴方はなんのためにテラスへ」

「煙草を吸いにな」

「煙草の吸いすぎは良くないですよ。私はこれで失礼します。風が冷たくなってきましたので」

男はお節介にもそう言って戒斗の隣を通り過ぎて行った。



三人がわかれて半時。館の警備していた使用人から金品が盗まれたという話が、戒斗達に伝えられた。まだパーティーに来ている客には、賊が入ってきていることはきづかれていない。

そんな中、クレイト・ダンバッハから新しい仕事が伝えられた。
客に気づかれることなく、賊から金品を奪い返し、館から賊を追い出すこと。

三人はバラバラに賊探しをすることになった。
カインが一番人の多いパーティー会場を、ノエルは空から外にいる賊を、そして戒斗が館内に潜んでいる賊を見つけるべく動き出した。

こんな広い館の中を、闇雲に歩き回っても何にもならないと考えた戒斗は、例のかくし部屋があるとされる北の三階の階段付近に来ていた。十中八九、ここを狙って来るはずだ。

もしかしたら来た後なのかもしれないが、そこは自分の運に任せるほかない。十分後、遠くから足音が聞こえた。

全部で五人ぐらいいるだろう。
けれどその音は途中で分かれ、まっすぐここに来たのは一人だけ。

「やっと来たか。まぁ、足手まといをちゃんと逃がしたあたりは認めてやる」

「勘違いしているだろう? 俺はニルヴァーナでは下っ端だ」

低くもなく高くもない声で答える。顔は影で見えていない。

「お前はニルヴァーナのシオンだ。一番危険な場所に雑魚を連れてきても無意味だ」

「俺の仲間はザコじゃねぇ!」

突然、自分の背丈ほどの大剣を振りまわし始めたシオン。その攻撃を当たらないスレスレの所で避ける。

「『神速の龍』と呼ばれるニルヴァ―ナのシオン相手に生きて帰れると思うなよ」

殺気を放つ相手を前にして戒斗もやっと自分の刀に手をふれた。

「悪いが子供でも容赦しない」

切りかかってくるシオンの大剣を戒斗は受けとめた。大剣を高い所から振りおすためか、勢いがあり手が振動で痺れた。神速と言うだけあってスピードも速い。

だが、まだツメが甘い。

スレスレでしか避けられないのではなく、わざとそうしている戒斗から見れば、剣の太刀筋は見きれる物だった。

(お遊びはここまでにするか)

そう思い戒斗が刀を振るうと、シオンはしゃがみこんでそれを受けた。
そしてそのまま勢い良く立ち上がり戒斗はバランスを崩し三階から踊り場に落ちた。

受身をとったため体に痛みはないが、あお向けのところへシオンの大剣が向けられている。
幸いな事に手から刀は離れていない。

「これで終りだ!」

声と共に大剣が振り上げられた。



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