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>>02

「分ってるけどさ、こんな事でもしないと暇で暇で、脳みそ腐っちゃうもん!」

ノエルが右手を腰にあて左手でカインを指差した。

「あたしはそんなの絶対にイ・ヤ」

「だったら館内でも歩き回って見れば? 見取り図に乗っていないものを見つかるかもよ?」

相変わらずニコニコと人受けの良い笑顔で答えた。

「それも楽しそう。じゃあ、行ってきまーす。ちゃんと見つけてくるからね」

ノエルが手を振りながら部屋を出ていった。

「見つかるかも……じゃなくて、見つけて来い……だろ」

今まで口を閉じていた戒斗が口元だけを上げて笑う。

「さぁ? どうだろうね。有るかもしれないし、無いかもしれない。ダンバッハなんて最近でてきた名前だからね、俺には分らないよ」

分らない、と言いつつ九割方、ここにはあるとカインは思っているし、それは戒斗も一緒だろう。だからノエルに探しに行かせたのだ。
ダンバッハが隠して、彼が数年でここまで成長することができた理由を……。

ニルヴァーナだけではなくほとんどの義賊達は二つのことで動いている。
一つは金を奪い民にくばること、もう一つは銃や麻薬など密輸を警察に知らせること。
ニルヴァーナがここを狙うということは、そういう物がここにあるということだ。

あの刑事が言ったことはおそらく本当だろう、だが今更どうこうするわけではない。
クレイト・ダンバッハがどんな奴であっても金さえ払ってくれれば立派なクライアントなのだ。

受けた仕事はやり通す、それがディライアとしての戒斗のプライドだ。

「どっちでもいいさ。俺はここを守るのが仕事。ニルヴァーナを捕まえたいなら好きにすればいい」

「遠慮なく、そうさせてもらうよ。だけど、いいのかい? ニルヴァーナのシオンはこの辺で一・二を争う腕の持ち主だ」

意味ありげに笑うカインを戒斗は睨みつける。

「何がいいたい」

「一度、戦ってみたくないのかい?」

カインの言うとおり、確かに戦ってみたいとは思っている。
けれど、ここで「Yes」と答えるのも、カインの思いどおりになるのも気に食わなかった。

「機会があれば戦うさ、今回の敵だからな。けど、自分から仕掛けにいくつもりは無い。
俺の仕事はあくまでも会場を守ること、ニルヴァーナを捕まえるのはお前の仕事だろ。俺も通路を見てくる。またパーティーで……」

「……遅れないでよね〜」

最後まで態度を変えないカインを半ば無視して戒斗は部屋を出る。

裏口から外に出ると館の西に面している森が目の前に広がっている。
その森にいる鳥の声をBGMに戒斗は壁に寄りかかり内ポケットからタバコを取り出し休息を始めた。

禁煙を始めたカインや外見年齢は子供のノエルの前では吸うわけにはいかず、ずっと我慢していたのだ。
体が動かなくなると困る為へビィスモーカーなわけではないが自分を落ち着かせる為には必要な物になっていた。二本ほど吸い終わると館の中に入った。

「――っ!?」

「あっ!」

ドアを開けると人とぶつかった。戒斗は平気だったが、ぶつかった相手は反動に耐えきれず尻餅をついていた。

「悪かったな」

戒斗はメイドへと手を差し出した。
我ながら愛想がないと思うがこの性格だけはどうにもならない。

「いえ、こちらこそ、すいませんでした」

メイドは戒斗の手をとり立ち上がり一礼して出ていった。

(今のメイド……どこかで会ったか?)

とても大人しそうな少女だが、何故か戒斗はそれに違和感を覚えた。
本来の少女の姿が別にあるように思えたのだ。

だが、戒斗はあの少女と会うのは初めのはずだから、どこかで会った他人の空似かもしれない。戒斗はそう結論付けた。



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