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人影






嫌だ、嫌だ!!




私はずっと長い時間走り続けた。だが、一向に出口が見えない。それどころか景色に代わり映えがない。まるで同じところをぐるぐる回っているみたいだが、洞窟の中は一本道。





おかしい。





すると不意にぼんやりと人影が見えた。私は助けを求めようとその人に駆け寄る。が、あと10メートルの地点で足を止めた。





黒いスーツ。黒のシルクハット。赤のネクタイ。少し明るいので色はぼんやりとわかった。だが、それは何処かで見た服装とそっくりだった気がした。




人影はゆっくり振り返る。






私はビクリと体を揺らし、後ずさった。するとそれは私をとらえたあと、口端を横に大きく広げ、ニイッ…と笑った。




背筋が凍り付くのがわかった。シルクハットを深く被っているため、目は見えない。見えるのは口のみだった。





赤のネクタイを揺らしてスウッと消えたそれにも……があったような気がした。





ヘたりと座りたい衝動を抑えて、私は人影がいた方へと走り出した。後ろからはあの恐怖が追いかけてきているから。








『――…っ、助けて!!』







ただ響くのは私のおぼつかない足音と、震えっぱなしの声だけだった。








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