通路の中
『うっ……ゲホッ…』
チョコレートの池からあがると、そこは確かに違う場所であった。目の前には暗い、暗い道があった。洞窟のようになっているそこは、全く先が見えない。
「ここが通路」
『えぇっ!? こんなところ通らなきゃならないの!?』
「大丈夫、中は意外と明るいから」
『そ、そうなの……?じゃなくて!!』
私は気になっていたことをすべて口に出していた。
『ここはどこなの!? 貴方はなんでウサギの耳が生えてるの!? ウサギくんはなんで仏頂面なの!! なんで夜なのにこんなに明るいの!? どうして蛙が木の上にいるの!! なんで蛙人間なんていたの!? なんで池がチョコレートなの!! どうして池が違う場所に繋がってるの!? 記憶って何――!!』
半ば逆ギレ気味で問うと、彼は仏頂面を崩さずに最初と最後の質問に答えた。
「ここは君の記憶を保管しておくセカイ」
『記憶を……保管?』
「記憶はノアが自ら失いたいと願ったんだろ」
私が、記憶を失いたいと願った?
「でもその代わり大切なものまで忘れてしまった」
もう、彼の話がよくわからなくて、オウム返しにしかできない。
「……………」
『…?』
いきなり俯いて黙り込んだウサギくん。そして、ボソリとこう呟いた。
「…………俺のことさえも」
確かにそう聞こえた。その瞬間、ビクリと体が揺れてしまった。でも頭の中にはウサギくんの呟いた言葉の意味を説明するものは無かった。
「ついでにウサギは笑わない」
『た、たしかに……』
そりゃあウサギは笑わないけれど……
「とりあえず行け」
『いだぁっ!!』
ウサギくんに思いっきり蹴り飛ばされて洞窟の中に入った。確かに中は外から見ていたより明るい。私は蹴られたところをさすりながら後ろを向いた。
『!!!』
光が……ない。
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