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すきすきっす!:P飯

今日もよく晴れている。いつものように滝の側で精神統一をしていると、聞き慣れた声が聞こえた。

「ピッコロさ〜ん!」


舞空術でふわふわとこちらに飛んで来る悟飯の小さな姿を横目でチラリと確認すれば、自然と口元が緩んでしまう。


「ピッコロさんこんにちは!」


「…どうした?」


本当は久しぶりに悟飯に会えて嬉しいのだが、素直になれない自分に、自分でため息が出る。

それも悟飯には分かるのか分からないのか、こんな俺に屈託の無い笑顔で接してくれるのが本当に嬉しかった。


「えへへ、お母さんに内緒で来ちゃいました。えっと…よかったら久しぶりに組み手をしてもらえませんか?」



宙に浮いているのにぴしっと礼儀正しく、お手本のようなお辞儀をするのがとても悟飯らしいと思いフッと笑ってしまう。
それにつられて、悟飯もふにゃりと笑う。



「いいだろう。悟飯、来い!」



俺が声を発した瞬間から、風を切る音をさせて技を繰り出す悟飯。
それはまだまだ未熟だが、時折見える楽しそうな表情に俺まで本気で楽しくなってしまうから不思議だ。孫家の親子には他人を引き付ける何かがあるらしい。



「わっ、わっ!ピッコロさん速いよ〜!」

「目で追うのではない、身体で俺の動きを感じろ!」


シュ、と悟飯に向けて攻撃を繰り出す。怪我をさせては母親にばれてしまうと思い加減していた。
しかしギリギリで当たらないように加減していた指先が、いい所に入ってしまった。



「…!!」

「しまった!」



フッと気が消え、落下しようとする身体を抱き留める。
突然の強い衝撃で気絶してしまったらしい。


俺の腕の中に納まる悟飯を木陰で休ませようとして見ると、薄く目を開いて既に気がついたようだ。タフさも身についたようで俺にしてみれば嬉しい事だが、

「あ…ピッコロさん…イテテ」

「すまない、俺としたことが…」


ふわりと着地して木の根元に腰を下ろす。


「…えへへ」

「?」



突然笑い出す悟飯を見下ろすと、俺の胸板に擦り寄ってぺたりとくっついていた。


「ピッコロさんにこうしてもらうと、何だか嬉しい気持ちになります。」


先程のままの体勢だったので、悟飯はピッコロの腕の中でにこにこと笑っている。


「何の事だ?…俺が何かしたか?」

「ううん、何でもないです。ただ、ピッコロさんの一番近くに居るみたいで」



嬉しいんです。と俺を見上げる。大きな目には青い空が映り、曇りの無い瞳は俺を見つめる。

イマイチ何の事か分からないが、俺の近くに居られる事が悟飯にとって嬉しい事だと、そのようなニュアンスなのは分かった。

それを理解した俺は何故か、腹の辺りが妙に熱くなるのを感じた。


「って、太陽があんなに高くなってる!」


突然焦ったように声を上げ、ふわりと宙に浮く。


「もう昼か…母親にバレないように帰るんだな。」

「はい!ピッコロさんありがとうございます。また来てもいいですか?」



絶えず笑顔を見せる悟飯。最初はあれ程泣き虫だったのが嘘のようだ。


「ああ…好きにするといい」


えへへっと笑ってくるりと背を向けるが、何かを思い出したようにまたこちらに向き直る。


「どうした?遅れるぞ」

「そういえばぼく、ピッコロさんにしたい事があるんでした!」

「な、何をする気だ?」


今日の悟飯はよく分からない事を言ってくる。怪訝な顔をしている俺の傍らに来ると、マントを引っ張り身を乗り出してきた。
俺が動揺していると、頬に柔らかい物が触れる感覚がした。


「なんだ?今のは…」

「お父さんがお母さんにしているのを見たんです。だから…きっと特別な事なんだと思うんです。」


そう言うと、ではまたとにっこり笑って今度こそ家の方へ向かって行った。


「うーむ…何が何やらさっぱり分からん。」



小さくなっていく悟飯を見ながらピッコロは一人ボソッと呟くのだった。


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