だいすきマーク :独伊
ラブロマンスの映画を見る。
綺麗な女の人の白い首筋に残る紅い跡。
「…キスマーク」
改めて考えてみたら貰った事がない事に気付いた。
「ふふ、頼んでみちゃお〜」
別の部屋で書類か何かをまとめているドイツの所へふらふら〜と入って行く。
「ねえねえドイツ〜!あのね、俺ね、して欲しい事があるんだー」
半ば諦め顔のドイツは、こいつに作業中は入って来るなという注意も無駄だと思っているようで、
「なんだ?紐が結べないのか?ボタンが留められないのか?」
「ううん、違うくてね…」
ギギッとドイツの座っている椅子を後ろに引いて隙間に身体を滑り込ませると、イタリアはその膝上に跨がった。
思ったより近かったドイツの顔にちょっと照れ、ドキドキしてしまう。
一連の作業を黙って見ていたドイツが合点したように少し微笑むと、イタリアの背中に腕を回した。
「あー…なんだ、その、ハグしに来たのか?」
「あ、ヴェ…えっと…」
少し躊躇って、シャツのボタンを一つ二つ外してはだけさせると
今更ながら恥ずかしくなって小声になってしまったが聞こえるだろうか。
「あ、あのね、ここに」
突然ボタンを外した俺に心底驚いた様子で頷く。
「ここにね、キスマーク…付けて欲しいんだけ、ど…」
顔が赤くなるのが自分でも分かった。最初はあんなに軽い気持ちで来たのに…
ちらっと見るとドイツもなんか真っ赤になってぱくぱくしてた。
「だ、だめ…?」
なんかもう情けなくなってきた。ボタンまで外して準備万端みたいな、ドイツびっくりしてるじゃん…は、はずかし!
「う、あ、じ、邪魔しちゃってごめんね!」
「ちょ、…イタリア!」
逃げ出そうとした俺に回された腕はそのままで、膝上から降りる前にそのまま抱き寄せられる。
「!」
不意にざら、と首筋に温かい感触。
「ぁ…!」
ゆっくり鎖骨まで舌を這わせ、ちゅとキスをする音がした。
気を抜いた瞬間、ちくりと軽い痛みが首筋に走る。
背中に回された手が俺の頭をよしよしと撫で、とてもいい気分になった俺はそのままドイツの肩にほお擦りした。
その後ハグとかちゅーとかもふもふとかしようとした俺は、ドイツによって部屋から追い出された。
怒ってるのかと心配したが、外れたボタンを上までキッチリ留められ物凄く赤い顔で「今後このような行動は慎むこと!」なんて言われちゃったから、普段の俺から想像もつかない俊敏さでドイツのほっぺにキスをして逃げた。
なんであんなに照れてるのかな?とか考えながら。
後日〜
「お?お前コレ…」
遊びに来ていたフランス兄ちゃんが、後ろから襟元を覗き込む。
「気付いた?ふふふ〜♪いいでしょいいでしょ!」
正にこの世は天国と言わんばかりの笑顔で自慢してくる。
偶然できたのかそこには赤く浮かぶハートの形。
「…流石はバカップル。キスマークにも抜かりなしってか。」
やれやれと苦笑いを浮かべるフランスを気にもせず、いつまでも手鏡と笑い合うイタリア。
「ドイツったら素直じゃないんだから!」
俺の事こんなに好きなくせにね〜!
こりゃキスマーク消えるまで奴はイタリアに会えないな。
と思うフランスだった。
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