つめたい光 :太妹
「なあ妹子、私は、狂っているのか?」
すっかり淋しい表情が染み付いた顔をこちらに向ける。
「…僕には、何とも言えません。」
貴方が信じたモノがなんであれ、僕は貴方が幸せで居るのならそれでいいと思った。
ただ貴方の望む世界はとても優し過ぎたせいで、貴方自身を蝕むんでしょう?
「全て上手くいくと、思っていた。私の理想は叶えられると。」
憂いのこもる瞳は、もう未来を見ないのですか?
「太子…」
孤独に、信じていたものの消失に、打ちのめされた貴方に、僕は何を望まれているんだろう。
「大丈夫ですよ。太子、時は人を弱くさせるものです。」
冷えた手をそっと握る、貴方は不思議な力を持っている。
慈しむ事を知る掌に僕はふと思った。
「後悔をしていますか?」
摂政になどならなければ、様々な苦悩に苛まれる事は無かった。
自由になれただろうに。
「…私は倭国を愛しているよ。胸を張って素晴らしい国だと、海の向こうまでその名が届けばいいといつも想っていた。」
そっと前髪に被さる冷えた指先は輪郭を優しく撫でる
「そんな、泣きそうな顔をしないでくれよ。だって私は後悔なんて、少しもしてないんだから。」
泣きそうなのは、貴方だ
頬を伝う熱い雫を冷たい月光が照らす。
神様どうか
僕のあいするひとを
「私の居ていい場所は無くなったんだな。」
つれていかないで
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