[携帯モード] [URL送信]
つめたい光 :太妹


「なあ妹子、私は、狂っているのか?」




すっかり淋しい表情が染み付いた顔をこちらに向ける。




「…僕には、何とも言えません。」


貴方が信じたモノがなんであれ、僕は貴方が幸せで居るのならそれでいいと思った。



ただ貴方の望む世界はとても優し過ぎたせいで、貴方自身を蝕むんでしょう?





「全て上手くいくと、思っていた。私の理想は叶えられると。」


憂いのこもる瞳は、もう未来を見ないのですか?




「太子…」






孤独に、信じていたものの消失に、打ちのめされた貴方に、僕は何を望まれているんだろう。






「大丈夫ですよ。太子、時は人を弱くさせるものです。」






冷えた手をそっと握る、貴方は不思議な力を持っている。

慈しむ事を知る掌に僕はふと思った。






「後悔をしていますか?」


摂政になどならなければ、様々な苦悩に苛まれる事は無かった。
自由になれただろうに。




「…私は倭国を愛しているよ。胸を張って素晴らしい国だと、海の向こうまでその名が届けばいいといつも想っていた。」




そっと前髪に被さる冷えた指先は輪郭を優しく撫でる



「そんな、泣きそうな顔をしないでくれよ。だって私は後悔なんて、少しもしてないんだから。」




泣きそうなのは、貴方だ














頬を伝う熱い雫を冷たい月光が照らす。



神様どうか

僕のあいするひとを






「私の居ていい場所は無くなったんだな。」













つれていかないで


[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!