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うすべにいろを (新高)

ひたり、と夢枕

今日も片目の男が
嬉しげな顔で


ぎらり、を掲げる月明かり


光を反射させない朱を纏い
鈍く光る刄が


男にしては
細やかな大仰さで


つーぅ、と
僕の皮膚を薄く裂く





***************



誘われる様に
また、この庭に立っている


散って仕舞った桜の樹の下

夢とも現つとも付かない


ゆらゆら、揺れる足元を
大概に高杉は持て余し

そんな己を自嘲する


薄い硝子一枚

隔てるモノはそれだけであるのに
なんとも厚い



新八がぼやく様に
意図も容易く我がもの顔で侵入している


訳、ではない



黄色い夜の粒子に
噎せ返りながら



慎重に足を進める

落ちない様に
堕ちない様に



左肩の下あたり
薄紅色が広がる






************




かたり、とモノ音
目を覚まして枕元の眼鏡を手探り



「またアンタですか…」


溜息混じりの
薄らぼやりとした世界の中

哀しそうに弧を描く口元の印象は強烈で



のろり、立ち上がり
態とらしく伸びをすると


てたり、とたり、
近付いて


無駄に開いた男の袷を正す


正せば、逆に
胸を大きく開かれて


痛い様な、熱い様な
甘い不快感


薄い紅色は
或る種の切なさすら誘う




「アンタそんなにしたいんですか」



大方、甘えに来ただろう
その髪を梳きながらも

無神経を装えば



首に当てられる
生暖かい鉄の冷たさ



つーぅ、と薄皮が斬れる



「僕の命はあげませんよ」

「…要らねェよ、そんなモン」



不敵で不遜な
泣きそうな声



刀を持つ手に
自分の手を重ね


そう、と下ろせば



「興が削がれた」



背中を向けて
煙管から一筋



「なァ、新八」


次の言葉が紡がれる前に



「傷が治る前にまた来て下さいね」



後ろから抱き締め
痕が残る程に耳朶を噛めば


高杉から伝わる温度が
切なく騰がる





今夜の紊乱が終わったら

また薄紅色を届けて下さい




その不器用な純情擬きを






КΦNЕС

モドル












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