Remedy
「さて、どうしたものか」
あの事件以来、琥珀の様子がおかしい。
別に妙に暗いとかそういう訳じゃないが……最近付き合いが悪い。
いや、むしろオレ、避けられてないか?
アイツは真面目だから仕事はちゃんとやっているみたいだし、鍛錬にも顔を出しているらしい。らしいのだが。
どういうわけか、オレがいないときを見計らっているのか。
同じ職場であるにも関わらず、ここ数日まったく会っていない。
声をかけようにも、オレが近づいてくるのがわかると姿が見える前にその場を離れる。
終業を狙って行っても既に誰かと出かけている、または白羊塔に直行。
夜に部屋に行ってもいないときた。
しかも、他の同僚たちとは普通に接しているらしい……。
どういうことだよ。
いくらオレでも、ここまでだとさすがに傷付くぞ。
オレが特に琥珀に何かした訳でもないし、原因としては……やっぱり、あれか。
ヤムライハやスパルトスは、先日のアイツの様子にかなり動揺していたみたいだが…。
実のところを言うと、オレはそうでもなかったりする。
あそこまで盛大にキレてるところを見るのはさすがに初めてだが、あいつは元来、怒ると怖い。
それなりに深い付き合いはしているつもりだ。
怒らせたときの恐ろしさは、自分の身をもって何度も経験している。
……個人的には、ジャーファルさんに匹敵するのではないかと思う。
第一、ここにいる他の大和出身の奴らの様子から琥珀はそれなりに身分が高かった人間なのだろうとは感じていた。
それも今回の件でより確信に変わったわけだ。
しかし、そんなことはオレも他人のことを言えないし、気にはなるが別にたいしたことじゃない。
まぁ、先日のことを考えると……多分アイツのことだ。
思いの外、盛大に怒りを噴出させたことに自己嫌悪でもしているのだろう。
それか自分のことを必要以上に聞かれるのが嫌とか、そのあたりか。
あいつらも、ここ数日琥珀に会っていないとぼやいていたあたり、その辺なんだろうなぁ。
けど、このまま避けられるのもおもしろくない。
さて、どうしたものか。
シャルルカンは酒場で一人、酒を飲みながら考えにふけっていた。
不機嫌そうな面持ちで一人飲む彼に、声をかけようとする者はだれ一人いない。
カランカラン
「おぉ、いらっしゃい」
「こんばんは、おやっさん。席空いてます? 三人なんですけど」
また客が来たようで入り口が騒がしくなり、視線をそちらに向けた。
すると、琥珀が持つものとよく似た翡翠が視界に映り、何かを閃いたシャルルカンは彼らの方へと向かった。
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