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Remedy
「冷静でいられるうちに」

捕らえられた奴隷商たちを前にしても、琥珀の思考は意外にも落ち着いていた。
彼らの挑発ととれる言葉も、冷静に聞いていられたのである。

我ながら、不思議なものだと思う。


むしろ、あまりこういった場で感情的にならないであろう二人。
ジャーファルさんとシャルルカンが怒りをあらわにしたことに驚いたくらいなのだから。

いや、周りが怒ってくれているからこそ、逆に冷静でいられるだけなのかもしれない。
質問を重ねながらも、目の前の奴らに対する怒りは沸々と、しかし静かにあることは確かに感じていた。


リーダー格と思われる男は、意外にも素直にこちらの質問に答えていた。
流石に、直接的に自分たちが不利になるようなことは話してはくれなかったが、ある程度の情報は得られたように思う。
この部屋に入る前、なかなか口を割らないと聞いていたのだが……。
とりあえず仕事は済ませられたとみていいだろう。
現時点では…あくまで、目の前の男の言葉を信じるのであればだが、ただの奴隷商だと推測できた。


確かに、世の中に奴隷商という職種が存在していることは理解していた。
故郷には奴隷制がなかったし、それで儲けている輩に対する嫌悪感はもとからあった。
身分制ですら、なければいいと思っているくらいなのだから。


さて、ある程度の情報は聞き出せた。
自分にできるのは、ここまでだ。
はじめに自分を見た時の様子からして、相手は自分の素性を知っているとみるならば、これ以上ここにいることは得策でない気がした。
第一、ここにいる彼らを裁く権利は、今の自分にはない。


あとはシンドバッド王に任せるべきだろう。
自分が、冷静でいられるうちに。


なんとか自分を納得させ、黒い感情を無理やり押さえ込むと、琥珀が男から視線を外そうとした。そのときだった。


「それにしても……。アンタらの目は本当に綺麗だよなぁ」


目の前の男が、自分の目を覗き込む。
怪しく光るその視線に、どこか卑しいものを感じ、それは心底不愉快なものだった。


この男は、何が言いたい。
目が…なんだというのだ。


「だからいいのさ。アンタらは働かせるのにも価値があるが……。
その目はさ、それはそれは高く売れるんだぜ?
その辺の宝石より、よっぽどなぁ」


その目玉、大和の翡翠って呼ばれてるらしいぜ?


男が笑って言ったその言葉の示す意味をを理解した瞬間、せき止めていたものが溢れ出す。
自分の頭の中が一気に黒く塗りつぶされていくような感覚を覚えた。
そして、迷わず腰に手を伸ばし、得物に手をかけた。



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あきゅろす。
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