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Remedy
「落ち着いて聞いてほしい」

「琥珀、調子はどうだ?」


俺が部屋に入ると、琥珀は身体を起こして外を見ていた。
薄暗い中、どこかを見つめるその姿が、どこか泣いているように見えたのは俺の気のせいだろうか。


「……なっ!? シ、シンドバッド王、何故このようなところに!」

「あーあーあー、ちょっと待て! 病み上がりなんだ。そのままでいい!」


気配に聡い琥珀にしては珍しく、声をかけられてはじめて、俺が入ってきたことに気づいたのだろう。
肩をビクリと震わせ、慌てて姿勢を正そうとする彼を制す。
相変わらず俺にだけ他人行儀なのには目を瞑ることにして、俺はベッドの横の椅子に腰掛けた。


「も、申し訳ありません。このような……」

「あーいや、気にするな。思ったより顔色がいいな。安心したぞ」

「いえ、御陰様で。それで、何か御用でも?」


あとからジャーファルが続いて入って来たのを見て、俺がただ見舞いに来た訳ではないことを察したのだろう。
その証拠に、そう尋ねる琥珀の表情は強ばっていた。
この話を聞いた彼のことを思えば、胸が痛まない訳ではないが……。
この国のためだ。割り切るしかない。


「ああ。例の海賊騒ぎの件だ。今日、スパルトスたちが彼らと接触した。そして、最終的には捕らえることになった」

「捕らえた? 追い払った、ではなく」


捕らえることなどせずとも、シンドリア周辺から追い払えればそれでいいはず。そう言いたげな顔だ。
通常ならそうだろう。だが……。


「そういうわけにもいかなくなった。彼らは、海賊などではなかったのだから」

「ここのところ、シンドリアでは移民の失踪事件が連続して起きていました。その被害者が、その船に乗せられていたからです」


引き継ぐように、ジャーファルが事の経緯を説明する。
その表情は険しく、苦虫を噛み潰すようだった。
そして、俺が続けた言葉を聞いて、琥珀の目は大きく見開かれた。


「どうか、落ち着いて聞いてほしい。その被害にあっていたのは、全員『大和』の民。琥珀、“君の”国の民だった者たちだ」




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