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極悪ラブレター@
靴箱を開けたらパッと目に飛込んだ、桜色の封筒



極悪ラブレター
 
 
 
「うっわー…」

思わず小さな声が漏れて、あたしは慌てて口を抑えた
幸い今は誰もいないからソレをひったくるように鞄の中につっこんだ
平然を装いながら靴を履き替えて(手が震えてなんかいないんだから!)急いでトイレの個室にかけこんで一息

妙に鼓動が早い
きっと、コレはラブレターってやつだ
もしくは質の悪い悪戯
できたら後者が良いな、なんて思いながら封筒を開ける

ペリペリって乾いた音がして封筒の口が開いた


ラブレターなんて、貰うの初めてだった
というより、今まで恋愛なんざとは無縁に生きてきたのだ
小さい頃から男勝りで、喧嘩も強かったし(今だって勿論強い)、人形遊びより外でサッカーをしているような子だった
高校に入ってからは男子には『姐さん』とか言って慕われることすらある(まぁ、冗談なんだろうけど)(だってみんな良い友達だもの)

意を決して、封筒の中身を出した
几帳面に角をしっかり合わせて折られた便箋が、なんだかとても怖いように思えて

(もしかしてあたし、恋愛恐怖症?)

なんて顔を歪めて笑った

中に書いてあったのは、これまた几帳面超A型並の綺麗な字


姐さんへ

伝えたい事があります
今日の放課後、屋上に来て頂けたら嬉しいです


たった、それだけ
名前すら書いて無い
しかし、なんとも典型的かつ古典的だ


(あー…どうしよ、)


頬がどうしようもなく熱くて、結局朝のSHRはさぼってしまった


授業にはなんとか出たけど、耳には入ってこなかった
頭の中はアノ手紙のことで一杯で

(自分らしくないなァー…)

何回溜め息をついたか分からない


「姐さん?姐さーん?名前ー?俺の話聞いてますかァー?」

隣ではクラスが一緒で一番仲の良い退がニコニコと昨日の夜家に出たイニシャルGを華麗に退治したって話をしてるっぽいけど、それだって耳になんか入ってきやしない

「え、あー…ごめんごめん。ボーっとしちゃって。Gがどうしたって?」

悪いことをしたな、と若干思いつつ一応山崎退Gの乱の結末が気になったりもする

「だから、スリッパでポイしたんだってば」

案外普通である
てか、一言で言えば地味

あたしが脳内でこんな辛辣な評価を下したなんてこと知るよしもない退は

「なんか今日らしくないよ?なんかあったの?」

そう言ってキョトンとした顔をした
なんとも可愛らしー…い気もする

「なんでもないよ!ちょっと寝不足」

「へー…らしくないなァー…。あ、もしかして生r「ちげーよ」

真面目な思案顔でいきなりそんなこと言うから反射的に、というより気付いたらあたしは退の顔面にパンチを入れていた。勿論グーで

「いい痛い。そんなグーでパンチしなくったっていいい痛い痛い!鼻が!鼻がァ!」

痛がる退の顔が凄く惨めであたしは爆笑した(あれ、あたしってSだっけ?)

「ったく、名前は狂暴なんだから」

「んなこといって、いつも土方に殴られてるから慣れてる癖に」

そう言えばまた退ははぁ、と溜め息をついた
土方が「呼んだか?」ってこっちに来ようとするから「なんでもないよダーリン」って手をひらひらふってあけた

手紙のこともその時は忘れてて
だから、

気付かなかったんだ
その時の退の眼が普段からは想像も出来ない程冷たかった、なんて

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