妄想だもの
団地妻12継続
サンジの心の中で、愛は行き先を求め、終わりない。
無限の空間に愛を注ぎ続けて、想い出を思い出に出来ないまま・・・。
「愛の器を知っているか?」
大きなふたつの身体をソファーに沈ませ、暫し睦み合った。
寄り添って、くたりとゾロに身を預けていたが、頭をもたげる。
「くくっ・・・愛なんて言葉が、おまえの口からでるとはな。」
サンジは笑いながら、鼻頭にキスをした。
「どの人間にだってココにあるんだぜ。」
小さな桃色の尖りを突いてゾロは言う。
ンんっと、くぐもった喘ぎを漏らして、されるまま。
ゾロの指は感触を楽しみ、くるくると柔らかな境目を弄ぶ。
「乳首にか?」
「アホか。心にだよ。」
今度はゾロが鼻先を甘く噛んだ。
「こころ?」
サンジはいつもの小憎たらしい皮肉をやめて、素直に聞き入った。
「器に愛が注がれて、満杯になってりゃ幸せだ。注いでくれるのはてめぇ自身じゃねぇ。他の誰かだ。」
「誰でも良い訳じゃねぇだろうし、常に満杯ってのも難しいかもしれねぇ。けど、誰かに与えて与えられて、そうやって器の中は潤ってんだ。」
汗で張り付く金色の髪を撫でて、覗く額に唇を当てる。
「それ、ゾロが考えたのかよ?」
感心したようにゾロを見下ろす顔は、子どもがお伽噺を聞かされているような幼い顔だ。
「てめぇの器は空っぽだ。」
途端にサンジの顔はクシャリと歪み、息苦しそうに喉を鳴らす。
「エースに愛を注いでも、見返りはこねぇ。器は空っぽのまんまだ。」
「ここに!ここにエースは、居る!!」
声を荒げてサンジは胸を抑えた。
エースは居るんだ。おれの心ン中に生きているんだ。
「ああ、そうだな。だが思い出だけの愛じゃ満たされねぇぞ。」
「見返りなんかいらない!おれはエースを愛してるんだ、それだけなんだよ!」
これじゃ、さっきの話に逆戻りだ。でもサンジには他に答えようがない。
エースに全ての愛を捧げると誓った。今もその気持ちは変わらないのだから。
「愛してるんだよ・・・。」
ゾロに抱かれておいて、エースへと愛を捧げる。
どこまでも不実な心と身体。
「そうだ。これから先も、エースを愛していけばいい。」
突き離されているような言葉。
氷のように冷たくぞわりと身体の内側を這い回る、何か。
じゃあ、どうして出て行ったフリしてまでおれを見てたんだ。
どうして優しく抱いたんだ。
どうして。
どうして。
最後にお情けで、温めてくれたんだろうか。
不実な自分への、最後の仕返しなのだろうか。
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