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妄想だもの
団地妻番外編青空


「綺麗な青い空だから。」







雨は夜更けから降りだし、朝になっても止まなかった。

一雨毎に冷える空気に身震いをする。


「今日も一日雨かな。」


独りごちて家を出る。



薄暗い灰色の雲に覆われた空は寒々しさを強めていた。





「サンちゃん、今日は寒いから暖めてぇ〜んv」


シャンクスが甘えた声で両手を広げたのに、ハイハイと適当に返してエアコンの温度を上げる。


「ああ〜ん、サンちゃんのイジワル!」


唇を尖らせてナプキンをケースに詰めるシャンクスの姿に、ちょっと笑ってしまった。





本当に寒くなってきたなぁ。

サンジは両手で腕をさすった。


「11月はイヤな月だぜ。」





ランチタイムも終わりそうな昼下がり。

カランカラン♪

ドアのカウベルを鳴らして男が入ってきた。



「おい、帰るぞ。」

「何だてめぇ、帰るのはおれなのに。いつもいつも、てめぇも帰るような言い方しやがって・・。」


むすっとした眉間にちょっと縦皺が寄ったが、ゾロは何も言わずに待っている。

サンジのそれはただ単に照れ隠しなのを知っているから。

反論してもますます照れてしまうだけだ。



気持ちが通じ合ったあれから、サンジの務め時間が終わる頃に必ず迎えに来るようになった。

そんなに心配してくれなくてもと断ったのだが、『一緒にいてぇだけ。』と言い切られてはもう言い返せない。

それはきっと本心だろうし、ゾロの優しさが嬉しかった。

だから文句や照れ隠しを言いはしても、送ってもらっている。



「じゃあ、お先にお疲れさん。」


言葉と裏腹にいそいそと帰り支度をしてシャンクスに手を上げた。


「また、明日な〜。マリモマ〜ン、サンちゃんをよろしくね〜。」


子供みたいにブンブン振る手にゾロはペコリと会釈して、サンジの背に手を添え出て行った。


カララン、カララン♪







「あ、雨上がったなー。」


サンジはブルーの傘を差すのをやめて腕に掛ける。

空いてる左手にゾロがするりと手を伸ばし握りしめた。

照れくさいなと頬を染めつつも、暖かい掌を振り払うことはしない。


いいんだ。誰に見られたって恥じることはひとつもないんだ。


空には厚く雲がかかり、日差しが届かない。


「一雨ごとに寒くなっていくよな。11月は寒さに向かってくから苦手・・・。」


体温の低いサンジには寒い季節はどうにも調子が悪い。


「そうか。」


そっけないゾロの答えに唇を尖らせて睨みつけた。


シュッ。


繋いでいない方のゾロの手が薙ぎ払うように空を仰いだ。


「なに?」

「雲を切った。」

「うん?」


見上げた空には、雲の切れ間に青が差し。

見る間に切り裂かれ左右に分かれてゆく。


「おお!すっげぇ。」

「おれといりゃ、常に晴れだ。」

「くくっ、言い過ぎ!でもそうだったらいいな。」

「だろ?」

「じゃあ、ずっといてくれよ。」

「ああ。」


思いがけず出てしまった素直な言葉に、迷いもなく答えてくれた。



嬉しくて胸の奥のソコが暖かい。



「洗濯物に困らねぇですむぜ!」

「そこなのか?」








「へへ・・・。」


笑いながら涙がコロリと零れた。



涙が暖かい・・・・。


「どうした?」


覗き込むゾロに静かに頬笑む。


「とっても綺麗な青い空だったから・・・。」


はらはらと落ちる涙を、大きな掌で拭いながらゾロが見上げると。

あんなにいっぱいの雨雲はどこかへ吹き去り。

青い空にはいくつかの白い雲だけが流れている。


「今日は風が強いから、雨雲が吹き飛ばされて晴れるってナミが言ってたんだ。」

「あー、やっぱりナミさんからの入れ知恵だったか。雲を切るなんざ、どこぞの剣豪かと思ったぜ。」

「寒くはなってくるが、11月も悪くねぇだろ?」

「うん、空が綺麗な良い季節だ。」

「おれが生まれた月だからな。」

「え!?いつ?」

「11日。」

「過ぎてるじゃん!って煙突の日だっけ?」

「ポッキーの日だ。」

「ぶふふっ・・・ポッキー・・・。」

「・・・んだよ?」

「イヤ、・・・ふふ。来年からはいっぱい祝ってやるよ。」

「ああ、楽しみにしてる。」




繋ぐ手の向こうに青空の道が続き、光が零れてゆく。






ふたりで歩む道のうえは。


いつだって。


綺麗な青い空だから。






【おわり】




最後の最後で過ぎてるけどゾロ誕に引っ掛けちゃいました。(まだ11月だし!)

しかも祝ってねぇ!!

でも、来年から≠クっと祝ってもらえます(`∇´ゞ


11月はお天気が移り気で雨も多いですが、風が強いので雲が追っ払われたりします。

先日、午前中は雨だったのに昼からやんでいました。

プラプラと構内を歩きふと見上げた空、雲の切れ目に青空の道が続いていたのです。

こりゃーイイもん見た!とお話に出したかったのです。

表現力はアレなんですが(+_+)。

幸せだよーってサンちゃんが思ってくれたらいいなぁ。

最後になりましたが、素敵なお題を下さった琴那ん!ありがとー♪

このふたりの幸せを書く機会を与えてもらえて、本当に感謝だよー!


お読み下さりありがとうございました(*^_^*)

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