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妄想だもの
恋はハリケーン





サン美の通う、ワンピィス女学園には伝説がある。

卒業までに世界にたったひとつの、自分だけのワンピースを手に入れた時、素敵な王子様が迎えに来てくれる。

世界一幸せな花嫁になるために、乙女たちは今日もミシンをタカタカ鳴らす。






「ったく、かったりーんだよ…。」

裁縫はあんまり得意じゃない。

「料理は出来るんだからいいんだ、別に・・・。」

そんな強がりを呟いて煙草をふかす。

屋上は立ち入り禁止だから誰も来ない。先生たちだってめったに来ないことは確認済みだ。

だから服飾の授業の時はこうやってサボることが多い。


「世界にたったひとつの、自分だけのワンピースかぁ・・・。」


夢だけだったらあるんだ。



シンプルで良いからきれいなAライン。

ひざ丈の裾がゆるく波打って。

生地は美しい海のブルー。





・・・・・おれに似合うかな?ってか作れんのか?

シンプルであればあるほど誤魔化しが効かない。

そこは料理と同じだ。


「やっぱムリだろ・・・。」

柵に肘をついてハァ〜と深くため息をついた。


「コラ、見つけたぞ!」

ビクッと竦んでヤベぇと振り向いたそこには、やたらと体格のいいスーツで緑頭の知らない男。

「・・・だれ?」

「誰じゃねぇだろ。煙草なんぞ吸いやがって。」

「ハァ?!てめぇにカンケーね・・・。」

咥え煙草で睨んでいるサン美の顔に男の手が近づく。

ぶたれる?!

とっさに目も唇もギュッと閉じて防衛体制を作る。

ぎゅうぅっと固まっているのに何も起きない。

そーっと目を開けて見ると男は口端だけで笑っていた。

「元気なアカンボ産めなくなんぞ!」

ぎゅうっと喰いしばったサン美の唇にそっと指を這わせて煙草を抜き取る。

あ、

サン美が小さく声をあげた時にはもう、男の唇に煙草は咥えられていた。


間接・・・キス。


カァーーーッと熱が上がっていく。

顔が赤くなってしまっていることは確実だ。


緑頭の男はスウウゥと深く煙草を吸い込んで、フウウゥと紫煙を吐いた。

その唇の動きや煙草を挟む指の様から目が離せない。

なんだろう、これって男の色気ってやつ?


「おまえ2−Aのサン美だろ?」

「なんで、おれのこと・・?」

二カッっと笑うと急に子供っぽくて。

「おれぁ、明日から2−Aの担任のロロノアだ。よろしくな!」

「じゃあマキノ先生の産休の?」

「そうそう、マキノ先生からくれぐれも頼むって言われってっからな。覚悟しとけ。」

急に現実的な気持ちに引き戻されて青ざめる。

そんな!担任になる男に、こんな初っ端っから煙草吸ってんの見られちまった。


そんなサン美を他所にロロノア先生は呑気に煙草を吸っている。

「おい、携帯灰皿とかねぇのか?」

「あ、うん。」

さっとポケットからビーズでデコった携帯灰皿を出して、しまった!と後悔する。

これじゃ常習犯ですって言ってるようなもんだ。なのに。


「おう、サンキュー。」

ロロノア先生は当たり前のようにコンクリの床にぎゅっと押し付けて、煙草を携帯灰皿に捨てている。。

ポカンと見つめているサン美にまたニカっと笑うと、それを自分の胸ポケットに入れてしまった。

「おれの・・・。」

「これは先生が預かっておくな。」

胸ポケットをポンと叩いて、サン美の頭にポフンと大きな手を置いた。

なに、どういうことだよ?

赤い顔のまま睨むと不思議そうな顔で覗き込んできた。

顔が近いって!!

「てめぇ、おもしれぇ眉してんのな。」

カチン!!

「うっせぇ!!眉のことイジんじゃねぇよ!」

担任ってことも忘れて本気で蹴りを繰り出した。

サン美の蹴りはそんじょそこらのヤンキーなんか太刀打ちできないくらいのスピードとパワーだ。

またまた『しまった!』と思った時はもう遅い。もうロロノア先生の延髄に入りそうな寸前だった。

あーーーー!停学だろうか?運が悪けりゃ退学?ジジィごめん!!

走馬灯みたいにいろんなことを考えたのに、サン美の足はパシンと宙で掴まえられた。

「おーっと、あぶねぇ。すっげぇ蹴りだなっ。」

そのすっげぇ蹴りを入れられそうになってたのに、屈託なく少年のように笑うロロノア先生にサン美は。




キュー―――――――ン!



って、

キテしまった。



これって。

これって。


もしかして、恋?!


トキめいてるサン美の足をグイと高く上げて、ロロノア先生はスカートの中を覗きこむ。

「パンツはお子ちゃまだな。」

パキっとトキメキのハートにヒビが入る音。

「このっエロ教師!!」

こんなの恋じゃねぇよ!!

サン美は掴まれた足を軸に身体を浮かせて反対の足を振り上げて。


ドゴンンンッ!!!!

ロロノア先生の脳天にバッチリ踵を落としてくるりと宙返りで着地した。

うつ伏せでコンクリにめり込んでいる先生の身体を爪先でツンと突つく。


「なめんじゃねぇ!!・・・と、マジ!?ヤベェ!しまった!!!おい、ロロノア先生!」

慌ててひっくり返すとおでこと頭の天辺に大きなタンコブ、目は白目。

「あ、あ、あ、どうしようぅ、先生!ロロノア先生ってば!」

抱きかかえて揺さぶるとガシっと腕を掴まれた。

「先生って言ってくれたなー。」

「!」

ゴトン!

急に目を開けて嬉しそうに笑うから。

びっくりして手を離してしまって、先生の後頭部が床に打ち付けられた。

「いてぇ〜。」

「先生とか言わねぇし。」

「言っただろ?」

「言わねぇ!!てめぇなんか・・・・ロロ先で十分だ!!」

「ふ〜ん?」

ニヤニヤしながら立ち上がるロロノア先生に腕を掴まえられてサン美も立ち上がる。

「も、離せよ!」

「離さねぇ。」

「なっ?な・・・????」

急に真面目な顔で引き寄せられて、分厚い胸板にぶつかった。

なに?これ、この展開?!

ふわふわした気持ちで呆然とするサン美の脇に腕が入り、持ち上げられた。

「背の割に軽いな。」

あれだよ、ほら。

ベタベタの少女漫画でよくある男子が女子をリフティングしてくるくる回ってお花と星が舞い散る・・・。

サン美がポー――ッと幻想を見ていたら、ドサッと肩に担がれ広い背中が目前に現れた。

へっ?

「さーって、指導室に行くとすっか!」

人ひとり軽々と担いで、のっしのっしと歩き出す。

「ヤダー!!!下ろせ―!離せー!」

大暴れして背中を叩きまくるサン美をモノともせずロロノア先生はハハハと笑った。

腰の辺りを大きなごつい手でゴソゴソ探るのをギョッとして、ますます激しく背を叩く。

「やめろ!セクハラ教師!!ヤメロって・・・・イヤ――――!やめてーーー!!」

ぶぇぇええええ〜んん。

小さな子供みたいに泣いてしまって情けないけれど、こんな辱めは耐えられない。

「おいおい、何考えてやがんだ?・・・よし、これも預かっとくからな。」

スカートのポケットから煙草の箱を抜き取り、トントンと指で叩いて促した。

「おれの・・・。」

「大人になるまで我慢しろ。」

「もう子供じゃねぇ!!」

「へぇ〜?」

「返せよ・・・ぐすんっ。」

「口寂しいのか?」

「・・・・・・。」

「代わりに先生のでも吸うかぁ?」

「?・・・・ロロ先の何?」

「ナニっ!?」

「煙草の銘柄、何?」

「ああ!ぅーっと・・・『ビッグ・マグナム』。」

「不味そうな名前だな。そんなん要らね・・・。」

「・・・・・・。」

(なんで、煙草取り上げたのに、代わりに自分の煙草吸うか?なんてゆうんだろ?変なヤツ・・・。)

今、本当にセクハラ発言されたのに、まったくわからないお子ちゃまなサン美17歳。

セクハラギリギリ(?)のくせに、妙に爽やかで喰えない産休教師ロロノア23歳。



「おい、楽しくなりそーだな。」

「楽しくねー!!」

ロロノア先生に担がれた肩の上、サン美はプウと膨れていたけれど ホントは胸がドキドキしてる。



恋はハリケーンのように突然現れた・・・?


【end】2012.10.13






[後書き]

コレにピンときて下さった方いらっしゃるでしょうか?

某お笑いコンビのコント『○美と○口先生』をベースにトキメキシチュを散りばめてみました(`∇´ゞ

私はこの「清○と川○先生」の大ファンでツンデレの彼女?が可愛くて大好きでした。

ゾロとサンちゃんversionなのでこんな感じの仕上がりです。

ご存じだったのに、ピンと来て頂けなかったら それは私の表現力の不足です。ごめんなさい!(>_<)))

一応読み切りにしてますけど、変な細かい伝説もあるんでどうなることやら・・・。

サン美って女の子名ですが、深く考えてないです。(女学園とかゆってるんですけどね(汗)。)

清美(あ;)みたいな感じで見て下さいな(^O^)/。

女装男子でも、女サンちゃんでも、コントとして見ても、レディのお好みでどれでもokっす。

自分の中でもサンちゃんの性別がはっきりしないので妄想のお部屋に入れちゃいました。


ここまでお読み下さりありがとうございます。

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あきゅろす。
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