妄想だもの
団地妻9刹那
ゾロが自分の脇を通り抜け、玄関へと向かう。
唇がふるふると振動するのには、どんな意味があるのか。
ギィィーーー・・・・ガチャン!!
団地の重い扉が開いて。
閉まる音が終わる直後。
その刹那、唇が大きく歪み、咥えていただけの煙草が落ちた。
「っ・・・・・・・・あっあああぁぁ・・・」
サンジは立ち上がり、扉を振り返りもせず、リビングのソファーへと倒れ込んで泣いた。
「うっ、うっ、ぅぅ・・・ふっ、くっ・・・。」
なぜ泣くのか。
自分が望んだことなのに。
嗚咽を漏らしながら考えても、何の答えも出てはこない。
「あっあっあぁっ、・・・ひっく。」
今、ゾロが自分を置いて出て行った。
『てめぇの気持ちはよくわかった。』と。
落ち着いた口調で答えていた。
ゾロもいい加減、うんざりしていたのだろう。
「アァーーー・・・」
おれは寂しかっただけだ。
誰でも良かったんだ。
ゾロじゃなくても。
なのに。
「ゾ・・・っ、ぅあーーーー。」
サンジは長い時間ソファーに顏を埋めて、子供のようにただ泣き続けた。
★
サンちゃん、号泣!
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