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白菊の路に
平子隊長紀行文  [平子*オールキャラ] 過去篇 






「ちょっと待ちぃや」



百十年前五番隊隊舎隊長休息室


俺は西日がよう入って気に入っとるこの部屋で、

今まで出したことのないような

真剣な業務用の声を己の口から発した


俺は腑抜けた表情のまま

目の前に正座している気持ちわるぅなるくらい

ニマニマしとる副官に視線を合わせる





「惣右介…お前ついに頭いかれたんちゃうか」


「僕の頭はいつもの通り正常に機能しております」


「アホか!

頭おかしない奴が右も左もわからん入りたてのチビを

いきなり五席にとか訳わからんこと言うと思とるんか!

いくら俺でもそれっくらいわかっとんねん!!」



本間何言い出しよるんやこの胡散臭い眼鏡は、

大体さっきのこいつの話聞いとったら

そのチビも男やっちゅー話やんけ!

そんなん断固反対や!



まあなんで五席が都合よう空いとったんかというと

この前三席が俺のおらんかった

虚の戦いで亡くなってしもうて

この前の四席を三席に、

この前の五席を四席と順々にあげたはいいものの、

いかんせん今の六席はとてもやないけど

上位五番目に入る程に成長してへん。

やから五席の席はまだ空いたままっちゅーわけなんやけど、



その五席にガキ置いてしもたら

五番隊は上位席官に独身の女死神がおらんくなってしまうやんけ!




「大体何でそいつなんや? もっと候補はおったやろ…」



可愛らしい女の子とか可愛い女の子とか。



「彼が一番鍛えがいがあり、
 
 そして白打や鬼道、斬術デスクワーク何でもこなせるというとても優秀な隊員だったもので。
 
 今三席を失った我々にとっては
 
 喉から手がでる程欲しい人材だと思ったものです
から。」



うーわ

惣右介顔がマジや。

絶対手に入れたろ言う顔しとるわ。


あかん。
ここで負けたら男が廃るで平子。

なんとしてもピッチピチの可愛らしい女の子を惣右介の眼中に入れな、

これから先また平隊員の鍛練しとうところに

わざわざ教えにいかな女の子が拝まれん日々が続くでな…




「でっでもなー惣右介…

 そいつやなくてもええやん…

 …そいつ含めた今度護廷に入ってくる新入りの一覧とかないんか?」


「ここにございます。」




惣右介はそうニマニマしながら

どこからか分厚い顔写真付きの資料を取り出した


本間にこいつはいかにも裏がありますみたいな笑顔張り付けやがって。

気味悪いやっちゃ



「どーもどーもっと…………
 ほーなんや皆えらい若い顔しとんなぁー……………

なんやパッとせんガキ共やな〜…………………………

 あーこいつ知っとるわ……

 あれや、どっかの貴族の御曹司やろ。

 かーっ!!絶対こいつは五番隊入れへんぞ惣右介ぇ」


「…?入れるつもりはないですが。どうしてです?」


「このいかにも成金っちゅー顔立ちが腹立つんや!

こんなんが部下になってみぃ!

あー想像したら腹立ってくるわ」


「……」


「…っお!?この子ええんちゃうか?!惣右介!」


「…ハァ、どの子です?」


「この子や、
 えーっ…松本乱菊…

 首席とまではいかないものの上位の成績で卒業、護廷への入隊を希望…希望隊は特にないが敢えて言うのであれば十番隊………

 なかなかええやないか!」


「…希望隊が敢えてですが十番隊なので

 本人の意思を汲んであげられたらどうです?」


「……チッ

せやかてこの子絶対将来別嬪さんなる素質持っとるでな!

見てみぃ!この真っ青な空色の目ぇとなっがい睫毛と綺麗な金髪と口許にあるセクスィーなホクロ!」


「…それがどうかなさいましたか?」


「…惣右介俺は時々、

 本間に時々なんやけどお前が本間に男なんか不安になるときがある。」


「僕も時々隊長が本当に女性の方に恵まれていないことに、

 隊長の将来が淋しいまま過ぎて行ってしまわれるのではと不安になることがあります。」


「よーし惣右介その喧嘩久々に買ったるわ表出ぇ!!」


「隊長、部下の安い挑発と言う名のお遊びに

 いちいち付き合っていたらキリがないと思いますが」


「……チッ」


「舌打ちしないでください。

…あ、僕が言ってる子はこの子ですよ、隊長。」





本間腹立たしいやつやわ


俺はもう一度舌打ちしながら

惣右介が人差し指で指している資料を渋々眺める



「市丸ギン……」


首席卒業、白打、鬼道、斬術、ペーパーテスト、

全てにおいて抜きん出ているといった内容が赤文字で記されていた



俺はその資料を見た瞬間フリーズした


その理由は資料に示されている十年に一人の逸材という文字でも、

天才少年という文字でもなくて、




「…なんやコイツ。」




そいつの顔写真を見たから



シャープすぎる顎のライン

開いとるか開いてへんかわからんほっそい目

それにヘラヘラした雰囲気を醸し出している微妙に口角の上がった口許



気味悪っ…………


俺はそいつを一目見た瞬間そう思った

同時に何か得体の知れんでかいもんを
こいつが持っとるような…

そんな気分になった




「…惣右介ぇ…」


「はい。」


「お前本間にコイツ部下にするつもりか」


「ええ。役に立つと思われますので」




大体優秀な新入隊員は

コイツが面倒見る役目になっとる


便所の位置から斬術の指導から五番隊の掟まで一から叩きこまなアカン上、

その優秀さを潰してはもったいないという

コイツの提案からなんやけど。





コイツとこの市丸っちゅーガキを一緒に行動させたらアカン。

俺の第六感がそう頭の中で囁くのがわかった。





「…よし、わかった。」


「それでは市丸君の五席での入隊を許可してくださるのですね?」


「ああ、お前がそこまで惚れとるんやったらしゃーないわ。」


「ありがとうございます。それでは僕はこれで」


「ただし条件付きや惣右介ぇ」





俺は資料を纏めはじめた惣右介を見ながらそう言うた

ピクッと惣右介の肩が不自然に動くのがわかる




「この市丸とかっちゅーガキのお守りは俺がやる」


「…それはまたどういった風の吹き回しで?」





おーこわこわ

口調はいつも通り丁寧やけど微妙に霊圧刺々しくなっとるし、

…ビンゴや。


惣右介が何や危険な奴やっちゅーことは俺の第六感が

ずーっと前からそりゃあもう叫ぶ勢いで言うとるからな。




「なんでもええやろー。

なんや、隊長が信用できんのか?

お前の惚れとる奴取ったりせんから安心しぃー」


「…しかし、隊長は業務で手一杯のご様子ですし」


「アホか、そんなんいつも本気やないからに決まっとるやんけ。

ちゃんとお守りぐらい出来るわ」




俺はそう言い捨て、

さっさと帰りぃーと惣右介に向かってヒラヒラと手を振った


何かじーっと考えこんどった惣右介は

それに気付いたんかそうやないんか

ゆっくりと立ち上がった



「そこまで隊長が仰せになられるのであれば、よろしくお願いいたします。」


「へいへい」


「失礼します」



そういつものニマニマ顔で帰って行った惣右介。


俺はそのニマニマ顔が

完全に視界から消えた瞬間にふーっと息を吐き出した




「今度から副官にはニマニマの男、部下にはヘラヘラのガキ」


もう右も左も気味悪い奴らばっかで泣きたいわ


第六感が鋭いんも考えもんやな











平子隊長紀行文
まあまだまだ序章ってとこやな









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