魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第4話……6
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なのはと別れ、習い事に向かう黒塗りの車。
すずかとアリサが並んで後部座席に座る中、そこはただ沈黙が支配していた。
視線を合わせようともせず、窓から外を眺めるアリサ。
それに気付きながらも目線を上げず、すずかは独り言のように言葉を漏らし始める。
「初めて会った頃は、さ。私、今よりずっと気が弱くて思ったこと全然言えなくて。誰になにを言われても反論できなくて」
そこで言葉を切り、いまだこちらを見ない彼女を横目で盗み見た。
在るのは頑なに黙して語らないその表情。
でも、すずかの知る“アリサ・バニングス”という少女ならきっと何も言わずにはいられない筈だ。
それを信じて彼女にあの頃の、昔話を持ち出した。
ふ、と小さな溜め息が聞こえた後、
「……あたしは我ながら最低な子だったっけね。自信家でわがままで強がりで」
アリサの口からも言葉が紡がれる。
「だからクラスメイトをからかって馬鹿にしてた。心が弱かったからね」
そして思い出す。
あの頃の弱かった自分。虚勢を張り続けたアリサ。そして──あの頃から強く、優しかったなのは。
「私も弱かったからちゃんと言えなかった。それは凄く大切なものだから返して、って」
きっかけとてもは些細なことだった。
おそらくなんとなく、程度だったのだろう。
いつもおどおどしていた自分のカチューシャをただ面白半分に取り上げられた。
でも、それに対して何も言えずただ怯えるだけ。
アリサにしてみればこれほど簡単に自分の虚栄心を満足させられる相手もいなかっただろう。
「やめなよって言われても聞かなかった。他人の言うこと素直に聞いたら、何かに負けちゃう気がしてたから」
そんなアリサの行為を咎め、力いっぱい頬を叩いた少女。
それが、なのはだった。
今でも鮮明に覚えている。
唇をきゅっと引き締め平手を振り抜いたなのはと、痛み以上に驚きを感じていたアリサ。そしてそれを呆然と見ることしか出来なかった自分。
「……あの時なのはちゃん、なんて言ったんだっけ」
本当は聞くまでもなく憶えている。
それでも、彼女の口からそれを聞きたかったのは──。
「痛い? でも大事なものをとられちゃった人の心はもっともっと痛いんだよ……」
怒りで目の前が曇ってしまったアリサに、なのはの強さと優しさをもう一度思い出して欲しかったから。
「そう、だったね」
背もたれに深く沈み込み、天を仰ぎ瞳を閉じる。
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