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魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第4話……3

       ●


「アリサちゃん! アリサちゃん!」

 廊下に出て辺りを見渡すがアリサの背中は何処にも見えない。
 だが、そんなに遠くに行くほどの時間もなかったはずだ。
 それならば──。

「アリサちゃん!」

「……なによ」

 階段下に向かう踊り場を隔てて、ようやくその姿を見つけた。
 不機嫌な表情を隠しもせず、こちらを見上げる顔。

「なんで怒ってるのかなんとなくわかるけど。ダメだよ、あんまり怒っちゃ」

 出来るだけ刺激しないように言葉を選んで声をかけるが、

「だってむかつくわ! 悩んでるのみえみえじゃない! 迷ってるの、困ってるのみえみえじゃない!」

 こちらの目線を振り切り、感情を吐き出しながらアリサは前を向く。

「なのに、何度聞いてもあたし達にはなにも教えてくれない」

 声のトーンが沈んでいく。
 そう、あんな態度をとってしまい傷ついているのは彼女だって同じなのだから。

「悩んでも迷ってもいないって嘘じゃん!!」

 真っ直ぐな視線が再度、すずかを射抜く。

 非難してるわけじゃない。
   
 わかっているはずなのに。

 その瞳は“全て”を知りながらなにも話さない、すずか自身を責めているように映った。

「……どんなに仲良しの友達でも言えない事はあるよ」

 微かに震える唇から押し出したこの言葉は誰に対する言い訳だろう。

「なのはちゃんが秘密にしたい事だったら私達は待っててあげるしか出来ないんじゃないかな」

 さも正論のように自分の口から漏れる弁護の言葉。
 でもそれは、なのはを傘に自分へと向けているのではないだろうか。

 そんな考えすら心の中に渦巻き始める。
 だがそんな暗い感情を、

「だからそれがむかつくの! 少しは役に立ってあげたいのよ!」

 親友の一言が吹き飛ばした。 

「どんなことだっていいんだから。なにも出来ないかもしれないけど少なくとも一緒に悩んであげられるじゃない」

 厳しく、力強く、そして優しいその言葉に、 

「やっぱりアリサちゃんも、なのはちゃんの事好きなんだよね」

 すずかは笑みを零す。

「そんなの当たり前じゃないの!」

 自分の返答に照れたのか、頬を朱に染めるアリサ。
 それに応えるように、すずかも笑みを深めるのだった。

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