魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第3話……10
「う〜ん、今回はいけると思ったのになぁ」
蹴り飛ばしたスニーカーをノエルから受け取り、もそもそと履き込む途中ですずかはそんな言葉を漏らした。
だがそんな言葉にも、
「自信を持つのは結構ですが、あの程度では何年たっても私に一撃を与えるなど無理な話です」
いつもと変わらぬノエルの厳しい指摘。
相も変らぬメイド長に少し困った笑顔を浮かべるすずかの後ろから、
「いやー、相変わらず人間離れした朝稽古してるわねすずか」
とても見知った声。
振り向き見れば、朝日に輝く淡い金色の髪。そしてそれを結わう赤いリボンに整った目鼻立ち。
紺碧色の瞳に悪戯っぽく笑うその人物は──。
「アリサちゃん、おはよ。今日も早いね?」
彼女の親友の一人、アリサ・バニングスだった。
「早起きは三文の徳ってね。現にいいモノ見れたわけだし」
瞳を弓なりに反らし笑いかけるアリサ。
どうも彼女は月村邸で遊ぶ約束がある日は必ず早起きをして、朝一番にやってくる習性があるらしい。
それも友情ゆえかどうかは定かではない。
しかし、彼女の言う“いいモノ”とは先程までの稽古のことだろうか。
もしあれを最初の頃から見ていたのだとすれば、相当早起きしたことになるのだが。
「す、すずかお嬢様〜、ノエルお姉様〜。それとアリサ様〜、そろそろ、はぁはぁ、朝食の準備が出来ますよ〜〜」
そんな3人と1匹と1機の元へと、声を上げながらこの家のもう一人のメイド“ファリン・K・エーアリヒカイト”が駆け寄ってきた。
ほんの少し走っただけだろうに、既に息が上がりもはやその命が尽きそうなほどに疲労しきっている。
そんな妹にノエルは少し溜め息を吐きながら、
「すずか様とアリサ様は先にお戻りください。私はあの子と共に後で戻ります。既にご入浴の準備は済んでおりますので」
音も無く、静かに頭を下げたノエルに今日の稽古の礼を言い、すずかはひよことクアドラとアリサを伴ないその場を後にした。
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