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魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第3話……7

 すずかの瞳が大きく見開かれる。その表情がしめすものは、驚愕。

 彼女の瞳は確かに直前までノエルを捉えていた。
 だが攻撃が放たれる一瞬の間に、“目にも留まらない”ならぬ“目にも映らない”速度で、ノエルはすずかの真横に回り込んだのだった。

 両手を塞いでいたスニーカーは既に左手に持ち揃え、右手はフリーの状態。

「まさか“縮地”まで使わざる得ない状況まで追い込まれるとは思いませんでしたが、まだまだ予想の範囲内です」

 絹の白手袋を纏った掌がすっ、とすずかの脇腹に押し当てられる。

 打撃とは違うただ軽く触れるだけの、攻撃ですらないその行動。

 そこに爪先は大地に触れたまま、前足の踵だけが静かに浮かぶ。

「──あ」

 違う。この状態からでも攻撃出来る手段があったじゃないか。 

 震脚を用いた回避不可の零距離浸透打撃──“寸勁”。

 しかもノエルほどの達人が本気で放てば、その威力は死にすら到る。
 当然、稽古の範疇で加減はするだろうが、その一撃自体に気を抜く訳はない。

 “負け”が確定したように見えたこの瞬間。
 踏み込む直前にノエルとすずかの視線が絡み合う。
 不可解なことに、この状況ですずかに浮かんでいたのは、笑み。

 この状況で笑える要素など何処にある?

 それともまだ何か手を隠しているのか?

 幾つかの思考が頭をよぎるが──否。
 その全てを振り払い、この一撃を完成させ

 べち。

「きゃ!?」

 いきなりノエルの口から漏れたのは、普段のクールさからは想像もつかない様な可愛い悲鳴。
 だが、それも致し方ないのかもしれない。突然、得体の知れない“なにか”がその瞳を覆うようにぶつかったのだから。

「っ!? しまった!!」

 それに気を取られ不覚にも洩らした驚きは時間にして2秒。

 その2秒が、最後の明暗を分けた。

「今度は──逃がさないから!」

 すずかはその時間を使い、ターンを踏むようにノエルの右側に回り込み、その脇腹に両の掌を押し付けた。
 立ち位置と状況は先程と同じ。
 違うのはひとつ、──互いの攻守の逆転。

 浮かんだ踵が大地を踏み砕き、それによって生じた爆発的な破壊力が足首、腰、肩の捻りによって螺旋へと練り上げられていく。

「ああああああああああああああっ!!」

 最後の咆哮。凝縮された力は両の掌底から解き放たれ、

「!!」

 直撃した。

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