魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第3話……2
第3話
擦れ違う思い、重なる嘘。です
静かな朝靄の中、月村邸の中庭で小さな人影がひょこひょこと動き回っていた。
よくよく見れば動きには連続性と法則性があり、なにか音楽に合わせてその身体が右へ左へ。
有体にいえば──ラジオ体操だ。
一通りの体操を終わらせた人影は更にそこから綿密なストレッチをこなし、最後に深い深呼吸。
「準備はお済みですか、すずか様」
朝靄に一回り大きな新たな人影。
メイド服にショートヘアのクールな表情。
ノエル・K・エーアリヒカイト。
月村家メイド長である彼女の言葉がもうひとつの人影である月村すずかへと向かう。
「うん、いつでもいいよ」
その言葉にノエルは小さく頭を下げ、どこから取り出したのか小さなデジタル時計を操作し始めた。
「ではいつも通り、時間は5分。開始から1分の間はこちらからの攻撃、反撃は一切無し。この設定、5分以内で私に有効打を入れる事がすずか様の勝利条件になりますが……よろしいですか?」
淀みない口調で朗々と語り、目の前の少女への確認。
すずかは静かに頷き、距離を取るため歩を進めた。
一方のノエルも、中庭のテーブル上に時計を置き反対方向に歩み出す。
振向いた時、互いの距離は5m。
近過ぎず遠過ぎずといった間合い。
いつもと変わらぬメイド服といった出で立ちのノエルとは違い、すずかは髪を三つ編みに纏めランニングシャツにスパッツの動きやすい恰好だ。
時計が開始の時間までのカウントを刻む。
10秒前からピッ、ピッとデジタル音がそれを知らせ、
ジリリリリリ!!
開始時間を知らせる音と共に、その戦いは始まった。
『しっかし、護身術の稽古ねぇ』
白い机の上。
ノエルの置いたデジタル時計の横にその黒は居た。
《常に精進は必要です。ひよこの身に甘んじている方には必要無いでしょうが》
更にその横に置かれた緑青の結晶体がしれっと語るのに、血管を引きつらせる黒いひよこ。
『……いつかどんな形にしろお前とは決着つけるからな』
《……もうついてるでしょう?》
そのいかにも歯牙にもかけてません的な発言にディーが更に言い返そうとするのをクアドラが遮った。
《始まりましたよ…!》
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