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魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
Prologue……3
空を翔けるは闇に溶け込む黒い残影。

それを追うは蒼い彗星。

そのスピードはほぼ互角。

地上から天空へと還る二条の星は、距離を詰める事なく高く高く上っていく。

「くそっ!差が縮まらない!このままじゃ振り切られる!!」

ひよこの焦った声。
しかし少女は涼やかに、しかしどこまでもやわらかい口調で答える。

「なら───撃ち落としましょう」

「この距離を?!このスピードの中で?!」

先程までとは違った意味での焦りの声。
しかしそれも数瞬の沈黙の後、信頼の声へと変わる。

「なら───任せた!」

「はい!」

風を裂き、夜を裂き続ける少女はその速度を落とす事なく、真っ直ぐ前を往く魔獣へと杖を向けた。

《Concentrate Sensitive》

少女の額から頬の上にかけ、青いバイザーが据えられる。
視界の拡大。
先程はシルエット程度でしか追えなかった魔獣の姿が、今は手に取るほど鮮明に映る。

握った杖は蒼き閃光を前方一点に収束しつつ、使い手足る主の命令を待ち続ける。

瞳の中心に見える十字線の回りを四角に囲まれた敵の影が飛び交う。

ゆっくり。

ゆっくり十字と四角を重ね合わせ、完全に重なったその瞬間、

「アクエリアス───」

《───Buster》

収束した閃光が解放され、轟音と爆音を引き連れ夜の空を二つに断ち斬る。

そして、その閃光は狙い違わず黒き魔獣を包み、炸裂した。






既に風は無く、宙空にたゆたう少女は炸裂した閃光の終点を見上げ続ける。

残光の中からゆっくりと魔獣だった影が、静かに、ただ静かに落ちてきた。

《Katharsis Mode───Set Up》

杖の先端飾りが開く。
そこから青の光、先程のものとは違う優しい青が放たれた。
水瓶から蒼を讃えた水が吹き零れる様、静かに異形の獣を包み込み、

《Standby Ready》

「デモンズブラッド───浄化」

《Katharsis》

その身の闇を、浄化した。




ゆっくりと公園に降り立った少女は、先程までの魔獣───小さな子犬を抱き抱えたまま、濃青の海を見つめていた。

「また、───ハズレでしたね」

「……うん」

2人───、正確には1人とひよこ1匹はそんな会話を交わしたが、それ以降押し黙ってしまった。

ざ…ざぁ、と流れた風が少女の紫の髪を揺らす。

それと同時。
少女は頭上のひよこを片手に乗せ、柔らかく微笑んだ。

「帰りましょう、ディーさん」

「そう…だな。帰るか、“すずか”」






これは“もしも”の物語。

私立聖祥大付属小学校
3年 月村すずか

紆余曲折、色々あって
“魔法少女”やってます。

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あきゅろす。
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