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魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第2話……10
「さすがに早いね。もう少しかかると思ってたんだけど」

目の前の少年はいつもと変わらない微笑みのまま、一歩ディーに踏み出す。

ッギ───ィン!!

その足元にバインドの鎖が再び穿たれる。

「動くな!ソレを台座に戻して両手を上げろ!」

ディーは本気だ。
次に怪しい行動を取った場合は本気で補縛する気だった。
そんな彼にセイムは少し肩をすくめ、大人しく台座へと向かう。

「なんで───こんな事を」

友人の背中が遠く感じる。ついさっきまではあんなに近くにいたはずなのに。

「───年齢が離れた身体の弱い妹がいるって前に話したよね?」

その背中がぽつりと言葉を漏らす。
戸惑うディーなどお構いなしにセイムはそれを続けていく。

「医者に、さ。もう半年持たないって言われた。治療法も確立されていない不治の病だ、って」

何の話をしているのかが理解できない。
この状況に何の関係が───、

「でも───。“コレ”を正しく使えば妹の病気も治るらしいんだ」

「バカな!古代遺物だぞ!どんな使い方をすりゃ病気が治るってんだよ!?」

ゆっくりと台座にソレを安置して、セイムはディーに向き直る。

「わかんないよ。でも───賭けるしかなかったんだ」

少年の瞳に迷いは無い。
迷っているのは、むしろディーの方だ。

今の話を聞いて、オレはどうすれば───

その迷いが、動きを鈍らせた。
その一瞬の隙をつき、セイムの小柄な体が地を滑るようにディーヘと迫る。

「───っ!?ウラヌスバインドッ!!」

デバイスの前に展開された陣から6本の鎖が放たれる。
本来なら避ける事も出来ないであろうこの状況。

しかしセイムは何の躊躇いもなく、迫り来る鎖の群れに飛び込み、

「甘い───よ!僕が何年君の後ろでサポートしてきたと思ってるのさ!!」

身を捻り、最小限の動きでそのことごとくを擦り抜けた。

互いに拳が届く距離。
近づいたセイムにディーは咄嗟に前蹴りを放つが、

「君の動きのクセならお見通しだよ!」

ソレも難無くかわされ、完全に無防備になったその懐に拳が───、

「ナメ───んなっ!」

届く直前にディーの身体が引っ張られるように前へと向かい、拳とセイムの体の横を通り抜ける。

ディーの腕にはバインドの鎖が光り、その先は台座へと絡み付いている。
あの瞬間、ディーは咄嗟にバインドの鎖を縮め、自らの体を台座側に引き寄せたのだ。先程とは真反対の立ち位置。
しかも古代遺物にはこちらが近い。

ディーは完全に自分の優位を確信したが、

「お見通し───って言ったよ?」

刹那に台座の陰から放たれる3個の魔力球。
恐らく先程の会話の間に仕込んでいたのだろう。

完全な背後からの攻撃。
しかしコレにすらディーは反応して見せる。

デバイスを振りかざし横に薙いで2個を弾き、

「っらぁあっ!!」

残った1個を泳いだ身体をそのまま回転させ、魔力を込めた裏拳で殴り飛ばす。

弾かれた魔力球は壁や天井に当たり、爆炎と爆音を巻き散らし部屋が煙に包まれる。

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あきゅろす。
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