[携帯モード] [URL送信]

魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第2話……9

(とりあえず仮眠室にでも行ってみるか)

先ず真っ先に思い浮かんだのは、2人共寝過ごしたのではないかという至極真っ当な考え。
本来なら許されない行為なのだが、自分にも覚えがあるのでそこは笑って流すとしよう。

そうして仮眠室前の廊下に差し掛かった時だった。
目の前から1人の男。
交代組の片方だ。
軽く手を挙げ、そいつに近づく。

「なんだ、こんなとこにいたのか。もう交代時間過ぎてるぜ、早いトコ代わってくれよ」

その言葉に男はキョトンとした顔をして予想外の事を口にした。

「何言ってんだ?交代シフト変わったって聞いてないのか?」

「聞いてないか、って“誰”───に?」

背中にイヤな汗が流れる。
もしかしたら自分はとんでもない事を仕出かしたんじゃないか、といった感じの悪寒。

「誰に、って決まってるだろ?」

聞かない方がいい。
聞いたらもう───。

ず───……んっ!

轟音と共に身体がが大きく横に揺れ、船体へと叩きつけられる。

「何だ!?敵───襲!?」

身体を起こし立ち上がると、視界に薄い煙が掛かる。

「多分内部爆発だ!外からの魔力は感じない!」

内心の動揺を強引に押さえ込み、ゆっくり思考を巡らせる。

(冷静になれ。現況を識り現状を鑑みて自分の持てる最大の判断を───)

おおきく深呼吸。
目を開いて横に居た隊員に声をかける。

「ブリッジとの連絡は?」

「……ダメだ。通じないっ!」

現況が見えない状態で動き回るのは危険だが致し方ない。

「とりあえず連絡の取れる全隊員を集め、アインゼル隊長を探してくれ。余裕があるならブリッジの確認も」

隊員も落ち着いたのか、真剣な表情でそれに頷いた。

「ディーはどうする?」

「オレは古代遺物の保管庫に向かう。セイムも残ったままかもしれないからな」

背中を向けて去ろうとするディーに隊員は「武運を」と小さな敬礼を送る。
それに返礼をして、ディーは真っ直ぐ目的地へと駆け出した。




保管庫。
その扉は大きく開け放たれていた。
幾重にも張り巡らされた封印は千切れ飛び、残すは台座とそのモノを封印せし小さな箱のみ。
その前に立つ男は躊躇いもなくその手の中にあるナンバーキーを横のスロットへ差し込んだ。
吹き出す蒸気。
しかしそれが終わってしまえば、何も危険の無いただのテーブルと変わらない。
男はゆっくり箱へ手を延ばし、それを両の手で───、

「そこまでだっ!!」

咄嗟に箱を引き寄せ、弾かれたように横に飛んだ。
数瞬遅れて先程まで男の居た場所に無数の鎖が穿たれる。

振り返ればそこには長杖のストレージデバイスを構えたディーの姿。
しかしその表情は辛く痛たましい。

「おまえは───」

喉の奥から搾り出すように。
ディーは悲痛なまでの叫び声で対峙すべき相手に呼びかける。

「おまえは何をやっている!?セイム・クレイッ!!」

薄暗い保管庫の中、目の前にいる───今まさにデモンズブラッドを強奪しようとしているのは、間違いなく彼の友人───セイム・クレイその人だった。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!