[携帯モード] [URL送信]

魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第2話……8


場所は時空管理局鑑船【ガルダ】内───。
話は5日前に遡る。


「何もなく護送任務も終わりそうですね、アインゼル隊長」

ブリッジへと続く廊下を歩く最中、ディーは隣にいるやや柔和ながら精悍な顔付きの青年へと声をかけた。

「そう、だね。我々の出番がないに越したことはないわけだし」

アインゼルと呼ばれた青年は小さな微笑みと共に言葉を返す。

アインゼル・フェリクス───。若干18才にして三等空佐の地位まで昇り詰めた若き天才。
現在は本人の強い申し出で機動二課スラッシュ分隊隊長という地位を甘んじている。

「だが我々の任務はまだ終わった訳ではない。本局への引き渡しが済むまで気を抜くなよ、アトランダム空曹」

表情を引き締め、ディーに注意を促す。
それに対し、

「了解です隊長!」

敬礼で応えるディー。
それを見たアインゼルは満足気に頷く。

「そろそろ交代時間だろう?急いでいかないと間に合わなくなるぞ」

それを聞いて「やべ!」といそいそと交代場所へと向かうその黒いの背中を見つめ、彼は小さく息をつくのだった。



「わるい!ちっと遅れたか?」

先の哨戒任務中だった2人が「おせーよ」などとディーの頭を叩きながら 、引き継ぎを済ませ手を振り休憩に向かうのを終えてから、隣に立っている相方に声をかけた。

「すまんセイム、少し遅れちまった」

「いや、大丈夫だよ」

全体的に線の細い中性的な少年───セイム・クレイは優しい笑みを浮かべ、護衛すべき部屋のナンバーキー投げてよこした。
それを難無く掴み取り、彼とは反対側の扉横へと立つ。

セイムとは武装隊訓練校時代からのルームメイトで、コンビを組んでいた時間も長いことから管理局内でも気安く付き合える数少ない友人の一人である。

そんな彼の横顔を一瞥してから視線を背中越しの扉へと移す。

彼等の護送任務対象である積み荷がこの扉の向こうにある。
何十にも封印結界が施され、尚かつ今ディーの持っているナンバーキーが無ければ台座からの移動すらままならないモノ。

古代遺物───デモンズブラッド。

秘匿級───程のランクには位置していないらしいが、これひとつで世界を破壊する事も可能なモノらしいがもらったデータを見る限りではそれほど危険なモノでもないらしい。

「しっかし───、こんなモノを狙ってくる輩がいるとはなぁ」

「そう、だね。わざわざ“聖王教会に秘密裏に保管する”って誤情報を流して犯人あぶり出そうとしてる位だからね」

もしかしたら物凄い犯罪者が狙ってるのかも、とは苦笑交じりに話すセイムにディーは拳を握り、

「それならそれでオレ達で捕獲するだけだ。スラッシュ分隊の力を見せてやる!」

しゅっしゅっ、と虚空に拳を打つ。
そんな相方にセイムの苦笑いが更に濃くなった。

「それにしても次の交代の2人が来ないね」

ごまかすように話題をすり替えたセイムの眉間に拳を押し付けながら、ディーは自分の時計で時間を確認し直す。

「───確かに。なにやってんだろうな」

既に交代時間を10分近く過ぎている。
さすがにこれは、こっちから確認を取りに行かなければ。
ディーはキーをセイムに向かって放り投げる。

「ちょっと呼びに行ってくるから、ここの事頼むな」

「あぁ、わかったよ」

小さく互いに敬礼し、ディーはすぐその場を離れた。
この時、ディーが違う方法で確認を取っていたならば、この後の最悪の展開は起こらなかったかもしれない。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!