魔法少女リリカルなのは
AQUARIUS
第2話……2
第2話
誇りある決意、想いある決意 です
見上げた天空は、蒼かった。
中庭に佇み、自分の部屋を見つめていたすずかは、視線を上げてから静かに瞼を降ろす。
昨夜の巨大アリとの戦闘も、こうやって目を閉じればハッキリと思い出せる。
そして、ディーと交わした会話も。
古代遺物ロストロギア。
デモンズブラッド。
そして遂には見つけられなかったその核【コア】。
あの後すぐ起きてきたノエルと忍、そして夜半過ぎにようやく帰ってきたファリンを何とかごまかし、そのまま倒れるように眠ってしまって───、
「……ディーさん。起きてこないな」
今朝方、なかなかバスケットから出てこなかったひよこの事を思い浮かべる。
今日はまだ、ろくに会話もしていない。
時間は昼過ぎ。
まだ───塞ぎ込んでいるのだろうか。
もう一度、天空を仰ぐ。
自分の心とは違い、遥かに澄み切った空が羨ましかった。
「すずかちゃ〜ん!」
「来たわよー、すずか〜」
玄関側から中庭に向かう小路から、いつもの二人の声が聞こえた。
「なのはちゃんアリサちゃん!」
弾かれたように笑顔を向ける。
二人は大きく手を振りながら近づいて、すずかの両隣りから視線を同じくして半壊した部屋を見つめた。
「しっかし、隕石が部屋に直撃するなんて、信じられない運の悪さよね〜」
半ば呆れ気味にぶち抜かれた壁を見るアリサに、
「直撃はしてないってノエルさんが言ってたよ、アリサちゃん〜」
こちらはアリサの言動に苦笑いで答えるなのは。
二人は同時にすずかの顔を覗き込んで、
「でも、すずかちゃんに怪我がなくて本当によかったよ〜」
「まったくよ。まぁ、すずかは悪運強そうだからあまり心配してなかったけどね」
「またまた〜♪ここに来る間、一番心配してたのはアリサちゃんのくせにぃ〜」
「ななななのは!それは言わない約束でしょ!!」
なのはの頬をみにょーんと引っ張るアリサを見て、すずかから小さな笑いが漏れた。
昨日までと変わらない平和な日常。
だからこそ、
あれだけの非日常が許せなかった。
今、こうして笑い合う友達も、何時あんな非日常に巻き込まれるかわからない。
だから───守りたい。
偶然とはいえこの“魔法”という力を手に入れたのだから、守り切りたい。
その為には───。
「すずか?」
はっ、と顔を上げると心配気な二人の顔。
「ご、ごめんね、二人共。昨日バタバタしたから少し睡眠不足みたいで」
取り繕った嘘。
騙している、という行為がすずかの胸をキツく締め上げるが、それを無理矢理押さえ込み笑顔を作る。
「そ、か。確かに昨日の今日だし、睡眠不足もまぬがれないわよね」
「ごめんね。せっかく来てくれたのに……」
「ううん、気にしないで。私たちもすずかちゃんが気になったから来てみただけだし」
「だけど」と言葉を置いてから、なのはとアリサはすずかの手をギュッと握り締めた。
「無理はしないで、ね。私たちで力になれるなら、いつだって力を貸すから」
「そうよ、絶対一人で抱え込まないこと!いいわね!?」
そんな力強い励ましと暖かい二人の手に、すずかは破顔一笑して───大きく頷いた。
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