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淡い恋心をネオン街に隠しました
「なぁ、元親」
「あんだよ」
「好きなんだって」


気づけよ、早く。





淡い恋心をネオン街に隠しました





何度言ったって伝わらない。同性っていう壁は大きいががそれ以上に、自分達のような職種はまともに恋愛もできないらしい。まぁ、そんなの今更だけど。


「また社交辞令的な?」
「違ぇしガチだし」
「あんさ、俺もお前もホストなの、分かる?お金持ちの姉ちゃんならまだしも、俺男だし。しかもお前ンとこのライバル店」
「んなこたぁ分かってんだよ」
「何度も言ったからな」
「俺も好きだって何度も言ってんだけど、分かってくんねぇの?」
「分かるわけねぇだろ」

薄ら笑い浮かべてんのは年上の余裕なのか。つっても3コしか違わねぇし俺はコイツよりガキだとか劣ってるとか思ったこと一度もねぇ。

「そもそもなんで俺なんだ」
「知らねぇよ、好きになんのに理由とかいんのかよ」
「テメェの女に言ってやんな」
「嫌だ俺はチカしか見えねぇ」
「お前ホスト失格だろ」


昔は。昔の俺だったら誰かに執着するなんて考えたこともなかったし、まず有り得なかった。ホストっていう職業に誇りを持っていたし、自分のナンバーを守りきることに躍起になっていたりもした。
だから『ホスト失格』なんて台詞言われた日には穏やかにいられずに喧嘩だってしたし、それが原因で謹慎処分食らったこともあるくらい。
その俺がなぜ、この男にこんなにも恋焦がれているのか。声、仕草、目線、表情。俺のすべてを独占したいって女も結構な人数いるってのに、その俺をここまで夢中にさせるなんてアンタよっぽど罪作りなんだな。

「ヒドい言われようなのな、俺これでもナンバーワンなんだけど」
「ナンバーワンが出勤前にガチトーンで男口説くかよ」

そう言った3才年上のアンタも、別のクラブのナンバーワンだ。ライバル店同士、決して仲良しとは言えない間柄。それぞれの代表の仲が悪いから、俺達が一緒に歩いてんのすら、店の連中に見られたら問題になっちまう。
そんな感じでさ、すっげ好きなのに伝わんねぇし、会うにも制限が厳しくて満足に会えない。現代版のロミオとジュリエットなんだよ。あれ、ちょっと違うか。


「つかさ、んなことどうでもいいんだけど前にメアドと番号渡したじゃん」
「あぁ、………失くした」
「Ha?!失くした!?」
「…ンだよ大袈裟だな、失くしたってアレ営業用の連絡先だろ?」



………個人用だよ馬鹿野郎!!!!!!



「なんで伝わんねぇの」
「ホストの考えることくらい理解してんだよ」
「俺がホストじゃなかったら?」
「……今日はヤケに押してくるな…」
「普通の昼職だったらちっとは分かってくれようとすんのかよ」
「…どうだろうな、そんなくだんねぇこと考える暇があったら忙しくなる前に少しでも仮眠取ったほうがいいと思うけど」


じゃあな。それだけで会話も強制終了。

歩きながら後ろ手に手を振ってダルそうに歩く細い体だって欲しくて欲しくて堪らないのに。俺って実はそんなに魅力ねぇのかな。
不安になってクラブの控室にいた真田に聞いてみたら「魅力はあるがどこまでが本気か分からない」そうだ。だったら俺の本気ってどうやって表せばいいんだ。本気も本気に見えないんじゃ明らかに不利だろ。

「真田、俺さ」
「今度は何事でござるか」


だから。ここは男らしくケジメをつけようと思う。

仙台という地に生まれてからどこで道を誤ったのかロクに学校にも行かず、遂には高校を中退してほぼ無一文で東京という晴れの舞台に足を踏み入れた。
親は当時から俺を勘当だとか言って見放してたし金もねぇしどうしようと露頭に迷った俺を拾ってくれたのが今の代表だった。
酒の飲み方も女の口説き方も気の利いた行動の仕方や接客のノウハウまですべて叩き込まれた。ナンバーワンになったのだって、代表の恩に少しでも報いるためだ。だけど。

流されるまま、なにか生きる目的を探したくて都会へ出た。そんな俺が本気になれそうなことをやっと見つけたんだ。
それをホストっていう仕事が少なからず邪魔してるってんなら、今の俺がやるべきことはひとつしかないじゃねぇか。


俺はさ、きっとアンタみたいに教養もなければ最善の策を考えられるような頭もないから。

それでもいっちょ前に背伸びしてアンタに肩並べて、少しでも追いつきたかった。認めて欲しかったんだよ。



「本気か政宗殿」
「大マジだけど」

素面のまま歩くネオン街はいつもよりくたびれて見えた。拾われた頃は別世界みたいにキラキラしてたはずなんだけど。大人になるって複雑。










「………………んだよクソ…うるせぇな…」

携帯の着信音が鳴り響く朝。今は営業用の携帯は電源切ってるから鳴ってるのは個人の携帯なんだけど。
いつもなら帰宅する時間に俺は家で寝ている。なぜって帰宅したのが昨晩の22時だから。


「…もしもーし」
『…俺だけど』
「……………………」
『…なんとか言えよ』
「…オレオレ詐欺とか今時流行りませんけど」
『腹立つなお前』
「え、なに。新手のドッキリかなにか?誰に頼まれたんだよ?」

だって驚きもするだろ、アンタ俺がやった連絡先失くしたとか言いやがるし。仕事上がりで掠れた声で電話なんか寄越しやがって畜生なに色っぺぇ声出してんだバカ。

『これは社交辞令でもなんでもねぇよ、俺が勝手にかけてんの。つか、なにお前勝手にホスト辞めてんだよ』
「あぁ、そのこと」

さっすがライバル店さん情報収集が早いのね。

「アンタはさ、俺がホストだから俺の言うことが本気に聞こえねぇんだろ?」
『そ、れは』
「だったらそんなまどろっこしい仕事なんか辞めてやるって思っただけだけど」
『そんなことで簡単に仕事捨てんのかよ』
「アンタがホストって仕事にどれだけ思い入れがあんのか知らねぇが俺にとっては元親がそれ以上の存在になってた。それだけだ」
『…っ………‥』
「気にすんなよ、別にアンタのせいで辞めたとかじゃないし」
『…気になんだよ馬鹿野郎…』



テメェが隣にいねぇと、静かすぎて気になる。



周りの賑やかな音に掻き消されそうに、それでもしっかりと耳の奥まで届いた声は、俺の寝起きの頭を覚醒させるには十分すぎるほどのダメージだった。










アンタの今の顔はきっと、店の照明くらい真っ赤だろうな





(傍にいろって縋ってよ、すぐに飛んで行くからさ)
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現パロのダテチカで天然マイペースな元親に頑張って告白しても全然気づいてもらえない伊達、とリクエストいただきました。…‥ちょっとすみません言い訳させてください。皆様からの詳細設定についてはお楽しみってことで、一覧のメモにはざっくりな内容しか表記してないのですが…リクエストの消化に時間がかかりすぎてしまって見事に萌な詳細設定ブッ飛んでましたほんとごめんなさい。頑張ったので載せておきますが、納得いくか書き直せ馬鹿って言われたらいくらでも書き直しますんでとりあえずコイツで我慢してやってください。

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あきゅろす。
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