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友達辞めます宣言
別に君の一番になりたかったわけでも特別になりたかったわけでもないよ。
ただアイツだけには取られたくなかった、それだけのこと。





友達辞めます宣言





「チカちゃんおっはよー!」
「おー、はよー」
「どしたの、また寝不足?」
「まぁ…ちょっと政宗と完徹でゲームしてただけ」
「…伊達君も一緒だったの?」
「いや、オンラインだから泊まりとかじゃねぇけど」


最近元親の口から頻繁に登場する名前。俺はその名前が大嫌いだ。正確にはその名前の人物だけど。

大体どうしてアイツは帰国子女で2年の終わりからこっちに転入してきたクセにちゃっかり元親の隣に位置してるんだ。元親の隣に俺がいていつもの光景だったのに、その向こう隣にアイツが入り浸ろうとしている。
旦那や慶次が元親と話してたってなにも思わないしむしろ自分も入っていく勢いなのに、アイツが元親と話してると無性に腹立たしいのはきっとその気取った態度だったり言葉の選び方だったりするんだろう。思い出すだけで苛々する。


「あー…の、さ。佐助?」
「うん?」
「お前さ、政宗のこと嫌いなのか?」
「どうして?」
「や、政宗の話すると嫌そうな顔するし…。実際お前らあんま話さねぇもんな」
「別に嫌いとかじゃないよ?」

…‥嘘、大っ嫌いです伊達政宗クン。それはきっと向こうも然り。

元々執着心だとか独占欲だとかは皆無な人間だった。来る者拒まず去る者追わず、上っ面だけの友人なんて鬱陶しいし、だからいつも一緒に連むメンバーも旦那か慶次か元親か、たまにナリさんかだけだ。…その中に今、アイツまでもが入り込もうとしている。
まるで完璧を貼りつけたような人間だった。競い事における旦那の良きライバル、慶次とはちょっとアレな話もしたりして、ナリさんの難しい話題にも難なく馴染んでいく。
元親とは恰も趣味や思考の似てる友人のフリをしてるけど、実際はその半分も理解できてないことくらい知ってる。だからアイツにとって元親がどんな位置付けなのかも容易に想像できたんだ。


「…チカちゃんはさ、」
「うん?」
「俺から離れてかないでね」
「なんだ、どうしたいきなり」
「俺様だってセンチメンタルにもなるんですー」
「よく分かんねー」

分かんなくていいよ、今はね。俺だってまだ上手く説明できやしないから。

「あ、そういや今日俺放課後に学祭の実行委員あるからさ、幸村達と先帰ってろよ」
「俺様も生徒会の会計やんなきゃだから。多分そんな時間かかんないだろうし、教室で待ってるから一緒に帰ろうよ」
「そうかー?俺もすぐ終わるとは思うけど…じゃあ、教室で待ってて」


そうやって俺だけに向けて無邪気に笑うから執着しちゃうんだって、ちょっとは自覚してくれたら楽なのにさ。





案の定会計の仕事なんて一時間そこいらで終わってしまって、大人しく携帯弄りながら教室で待機する。
元親のほうは長引いてるんだろう。さっきミーティング室覗いたらまだやってたし。


「……………あ、」
「…………………」

ガラッと無遠慮にドアの開く音がして。だけどそれは自分の望んだ相手ではなくむしろ真逆の人物。

「…‥伊達君がこんな時間まで残ってるって珍しいね」
「あぁ、今日の課題提出しに行ったら色々手伝わされた」
「へぇ、あのレポートもう終わらせたんだ、凄いね」
「別に。授業中にやってたから終わっただけ」

一言二言会話があってからは痛いくらいの沈黙。静かな空間はなんともないけど、互いに嫌い合ってる人間がいるとなるとそこは居心地の悪いものでしかない。…っていうかなに突っ立ってんだよ用がないならさっさと帰れよ。


「………………」
「………なぁ、」
「…………なに」

「…………元親さ、もう帰った?」

嗚呼、だから大嫌いなんだコイツだけはどうもいけ好かない。

「…元親なら学祭の実行委員でまだミーティングしてるよ」
「ふーん…じゃあ待ってたらココ戻ってくるよな」

無意識、眉間に寄ったシワを伊達は一声で嘲笑った。いい加減には苛々もピークだけど2人だけで帰るんだなんて小学生みたいな理由恥ずかしくて言えやしない。


「俺様さ、君のこと苦手なんだよね」
「またハッキリ言ったな」
「だからごめん、今日は帰って」
「イヤだって言ったら?」
「それでも帰って」

「…‥なら聞くけどお前って元親のなに?」

「なにって?」
「ただの友達?」
「だったらなにさ」
「別に?元親と話しただけでにわかに不機嫌な顔されるし、俺のこと嫌ってるみたいだし。てっきり付き合ってんのかと思ってたけど」


付き合う?馬鹿言ってんじゃない。俺も元親もノンケだ。俺にとっての親友だから取られたくないだけ。

「付き合ってねぇんならいいや。俺、元親が好きだから」
「は、」
「言っとくがlikeじゃねぇぞ」

ライクじゃない好きなんて、思いつくのはひとつしかない。

「な、んで…」
「Ah?だから言ったろ、付き合ってんのかと思ってたって。略奪愛も捨て難かったけど、堂々と口説けるならそれはそれで」


だってお前らの間には清らかな“友情”しかねぇんだろ?


友情と恋情の境目を決めるとしたらどこなのだろうか。
きっとそれすらも曖昧なまま誤魔化してきたから、絡まって解けなくなってしまったんだ。柄にもなく焦燥している、この俺が、珍しく。

「………認めれば?」
「…‥なにを」
「好きなんだろ?元親のこと。だから、同じ相手に同じ気持ちを抱いてる俺だけが気に食わなかった」

それならば不可解な自分の気持ちもすべて合点がいく。
一番の親友でいられたら、きっとこの男とも親しくなれただろうに。


「でも多分もう遅いぜ?アンタはずっと逃げてきた自分を後悔するだろうし、俺のことももっと大嫌いになる」


ニヤリ。伊達が嫌な笑みを浮かべたとほぼ同時に開いたドアから顔を出したのは紛れもなく話題の主人公で。

「ごめん佐助。遅くなった…っ?!ま、政宗…」
「おう元親、お疲れ」
「おぉ…、サンキュ」



みるみるうちに赤く染まる頬も、その橙色に染まった白銀の髪と同様、夕焼けのせいにできたらいいのに。










ならばせめて、この涙声には気づかないフリをして





(もどかしい延長線上には無情にも君の笑顔が咲いていた)
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学パロで友情だと思ってたのに伊達にチカを取られて嫉妬してる佐助、とリクエスト頂きました。個人的に伊達親の次に佐親が好きです。愛を詰め込みすぎて見事空回り。

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