ママは誰のもの? 静寂に包まれた午前5時。 間抜けなチャイムの音が一度、部屋中に響いた。 ママは誰のもの? 「すみませんでした!!ホント、俺のせいなんです…!!」 朝帰りになりそうだってことは聞いていた。なにやら仕事で悩んでいる部下の相談に乗ってやりたいとかで、2人で飲みに行くんだって言ってたし。 飲みに出たら遅くなるのはいつものことで。だから今回もフラッと帰ってきて適当に風呂済まして隣で普通に寝てんだろうなって、そう思ってた。なのに。 「なに、どうしたのコレ」 「チカぁ〜たれぇまぁ〜」 一緒に飲んでいたであろう部下の人に支えられてフラフラと戻ってきた旦那様は、原型も留めてないくらいに酔い潰れていました。 「俺はほぼ話してたんで気付かなかったんスけど、伊達先輩結構飲んでたみたいで…!!」 「や、悪ィの完全にコイツだからよく言っときます。ご迷惑おかけしてすみません…、ほら、政宗も謝れ」 「おーぅ、また飲み行こーなぁ」 「はは、ぜひまた行きましょう!じゃあ、俺はこれで失礼します」 「有難うございました」 2人きりになった玄関で、あーだのうーだの言ってる政宗を俺は知らない。元々無茶して飲むような性格じゃないし、それなりにアルコールにも強いはずだからここまで酔うのが不思議なくらい。 「お前さ、なんでそんなバカな飲み方したんだよ」 「んぅー…?あー、チカだぁ」 また。人の話をまったく聞かない。 チカチカ言いながら抱きついてきてそのまま押し倒しやがった。 「なんだよ、チカさんこんな固い床でヤりたくないんだけど」 「じゃあベッドいこ、ごぉとぅーへぶーん」 「ヘブンより先に風呂に行けお前は」 「やだ。チカも一緒にこい」 「今!何時だか分かるかい政宗さんよ」 「チカさんは何時だって綺麗だぜ」 「アリガトウ今5時なんだよね、朝の!俺眠いんだよねスッゴく!!だから寝よ、な?!」 「寝よ、なんて積極的だなぁまいはにぃ〜」 「会話して頼むから」 困った。扱いにすごく困る。酔ったコイツに免疫がないから特に、どうしたらいいか分からない。だけれどいつもの仏頂面からじゃ想像もできないような顔でヘラヘラ笑ってて、真っ赤に頬染めて嬉しそうに擦り寄ってくる政宗はどこか可愛らしかった。普段は頭撫でてやっても嫌がるだけなのに。 「まぁまぁ〜」 「かーちゃおちっこ」 「ぐぁ〜〜〜面倒なのが起きてきた…」 ぐだぐだのやり取りのせいですっかり目も覚めてしまった。いつもならもう2時間は寝れるのに。政宗が無遠慮に大声で喋るから小さなウチの怪獣も起きてしまったようで、今まさに腹に政宗、背中にチビだ。 「政宗、梵便所だって。連れてくから離れろ」 「やだ」 「やだってお前…」 「あ、とーちゃだ」 「……………」 パパ大好きな梵はパタパタと政宗の元へ走っていく。千翁は多分、やけに静かだから背中にひっついてまた寝そうになってんだと思うけど。 「うぇ!とーちゃくちゃい!」 「くさくねぇよ〜ほら、梵こっちこい」 「やぁ!くちゃいもん!かーちゃあっちいこー」 「だめ!チカは俺といるんだからぁ〜お前一人で行け」 「…こんなチビ相手にガキかよお前」 梵が俺の手を一生懸命引っ張ってリビングまで連れて行こうとする。政宗が制す。の繰り返し。千翁はいつの間にやら床に転がって寝ていた。お前の神経たまに羨ましくなるよ、なんか俺の親父がいるみたいで。 俺もそろそろケツが痛いから立ち上がりたいけど、コイツの怪力知ってるから無理にも立ち上がれない。特に酔ってる今は遠慮もできないだろうからそれこそ腰が砕ける、アッチの意味ではなく。 とりあえず、結構気張ってるが梵は便所じゃなかったのか。漏らすなよこんなとこで。 「政宗、ホント退けって。風呂入ってちょっと寝ろ」 「やだやだやだチカも一緒に、」 「ぐ、…その上目遣いには騙されねぇぞ…‥何回梵と千翁にソレやられたと思ってんだ」 「いっつもコイツらばっかチカ独り占めしてずりィじゃん!」 「かーちゃおちっこでるぅー!」 「ああぁやっぱり!梵、すぐ行くからもうちょっと我慢してな?」 「ちーかぁー」 「あーもう!分かった、政宗も分かったから!」 こうなりゃヤケクソですよ。 未だ上目で見上げてくる政宗に甘く口付けて一言。 「…“母ちゃん”はアイツらのモンだけど、“元親”はお前だけのモンだぜ?」 だから夜は俺を独り占めしてくれよ、ダーリン (なんとかトイレ、間に合いました) -------------------- 幸せ家族計画で、元親ママを政宗パパとチビが取り合う、とリクエストいただきましたが…‥すみませんこの話の宗様が大人すぎて酔わせでもしなきゃチビと張り合うことなさそうだなとか勝手極まりないんですが。 こう、下書きも一応書いてはいたのにこのクオリティ。残念である。これでは中村の愚息も萎えるはずだ。 [*前へ][次へ#] |