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ふたり占め
元々仲の良かった3人。
一線を超えたと言うよりはむしろ、延長線上を進んだと言ったほうが正しいのか。

同じ時、同じ場所で。別の人間から同じことを告げられて。
どちらも同じだけ大切だから、選べないと言った俺。



(……だからって、どうしてこうなった……)



俺を挟んで右側に佐助、左側に幸村。
どこでどう道を誤ったのか、仲良く平等に、俺を愛してくれている存在。


「佐助、今日の弁当はなんだ?」
「今日はねぇー、ちょっと時間なかったからサンドイッチしか作れなかったぁー」

チカちゃんも食べるでしょ?ってぶりっ子して首傾げてみても全然可愛くなんてないんだからな。

「これだけでは足りぬだろう」
「旦那がね」
「某、ちょっと食堂で軽食を買って参ります故、元親殿は先に食べていてくだされ!」
「え、あ、おぉ‥」


そもそも、だ。
どこからどう見ても男な俺を恋愛対象として見れるもんかね。

俺だって始めは友達としての意味だと思ってた。
なんだコイツら改まってって、不自然に思いつつも、ありがとう、俺もお前らのこと好きだぜって、そう返したんだ。

『はぁ…、あのさぁチカちゃん、』
『某が申しておりますのは、』

『『恋愛として、好きってことなんだけど』』


そうして向けられた目線があまりにも真っ直ぐで真剣だったから冗談で流すわけにもいかなくなって。
とりあえず俺も真面目に受け止めようって考えまくった挙句に消化不良と知恵熱に見舞われたもんだから2人も困ってしまって。

そこまで悩ませるつもりじゃなかったんだ、ごめんね。なんて。
あんな切ない顔見せられたら俺だってどうしたらいいか分からなくなる。


例えば、その時頭を撫でてくれた佐助の掌と、背中を擦ってくれた幸村の掌の温度が心地良かったとか。

どちらかが選べないから、どちらも選ばないとか。
そんな定理は誰が作ったんだ?


(…あぁ、そうか、俺が望んだからこうなったのか…)


欲張りだってのは、自分が一番良く分かっていた。
食欲が家出して発熱までして見つけ出した答えに、2人が苦笑したのも事実。
それなのに分かったとだけ言って今の状況を楽しんでくれているコイツらは、つくづく俺に甘いんだと思う。



「なーに考えてんの?」
「なんも」
「嘘つき。…眉間にシワ寄ってた」

昼休みの屋上で、佐助の作った昼飯を片手に。
せっかく二人きりなんだから、俺のことちゃんと見てて、ってなんとも可愛らしい独占欲。

「お前らのこと」
「ん?」
「…お前らのこと、考えてたんだよ…」
「俺“だけ”のことじゃなくて?」
「…うん。佐助だけじゃ、足りねぇから」


3人でいることが当たり前だった。
横一列に並んで帰る放課後も、どちらか一人が欠けると話が弾まなくて。「物足りないな」って笑うこともたくさんあった。

右側に佐助。左側に幸村。

似ているようでまったく違う体温があるから、俺はいつでも満たされている。
今更どちらかが欠けたら、片側だけ寒くて適わねぇよ。


「悔しい気もするけど、…これが普通になっちゃったしなぁー…」

サンドイッチ咥えたまま、胡坐をかいてる俺の太股に頭を預けて横になる佐助。

「…牛になっても知らねぇぞ」
「ひどーい」
「ああ!抜け駆けは狡いぞ佐助!」
「あ、おかえり旦那〜…ってアレ?なにも買ってこなかったの?」
「ここに着くまでに全部食べたのだ!」

お陰で満腹でござる!なんて無邪気に笑って。躊躇いもなく反対側の太股に頭を乗せた幸村。

足が痺れるって小言は贅沢でしかないんだろうな。
俺の好物ばかりが挟まっているサンドイッチに、数量限定の購買のプリン。俺がいつも買うココアまでそこに鎮座していて、これ以上の贅沢なんて言ったら罰が当たりそうだ。

二人とも女子人気高いだろうにもったいないと何度思ったことか。今はその人気が煩わしいものでしかなくなったけれど。
俺だって人気がないわけじゃないんだろう。だけどコイツらとこうしてるほうが楽しいからあまり興味もない。


幼い寝顔にかかる前髪を除けてみる。
いつから絆されたのか、こんなに愛しく感じてしまって。
柔らかな髪を撫でながら、寝ているのをいいことに額に落とす口づけは、普段絶対に俺がしないことのひとつだ。

「………今のどっちが先だった?」
「………勿論、某でござろう」
「………なんで起きてんだよ………」
「そりゃあ、…ねぇ?」
「このように優しい顔をなさっている元親殿、うっかり眠ってしまって見逃すほうが勿体ない」
「相変わらずハズいヤツらだな…」
「それが好きなんでしょ?」
「元親殿の要望でござるよ」


いつもみたいに優しい笑顔も好きだけど。
こうしてたまに悪戯っぽく笑う顔も好き。
結局は俺も抜け出せないくらいにはコイツらのことが愛しくて仕方ないらしい。

「ねぇ…、だから続き」
「…っ、」
「シても宜しいか…?」
「ちょ、ま、…!、屋上!しかも、昼休み終わる!」
「えぇー、この流れでソレ言う?」
「午後の授業はフケるのが常識でござるよー」


2人から、同じだけのキスをされる。
同じだけ愛されて、ありったけの想いは溢れて留まることを知らない。
どこの愛撫がどっちの役割だとか、今日はどっちが先だ後だと。俺には分からない2人のルールもあるようだけど。



翻弄されて、翻弄されて。
ドロドロに融かされた末のこの関係になんと名前をつけようか。

少し肌寒い風が撫ぜた素肌は、二人分の吐息によってまた体温を上げた。










愛して、融かして、搾り取って





(僕達は甘い過ちを繰り返す)
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元親がちょっとビッチ臭漂ってて嫌だ^^^^

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