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この恋、逃走中
『これから、予選で生き残った6人をメインステージへ案内する。70分間、ハンターの目を掻い潜り生き残った逃走者には126万円が支給されることとなる』


「126万かよ…スゲェな…」


逃げ切れば、賞金。捕まれば、ゼロ。
シリーズ史上最も過酷だといわれる予選を逃げ抜いたのは、たった6人の逃走者達だった。

真田幸村。
前田慶次。
徳川家康。
石田三成。
森蘭丸に、それから。

長曾我部元親。


「また随分と減ってしまったな…」
「あぁ…なにせハンターさんは一言も喋らないクセに見つけた獲物は見失うまで追い駆け回す」
「厄介だねぇ…。なにが厄介って、そのバケモン級の瞬発力と持久力。ただ逃げ回ってるだけじゃ、どっちが先にバテるかなんて目に見えてる」

「……無駄口を叩いている間に…、ハンターが放たれたようだ…」

「よぉーし、んじゃ!全員の健闘を祈るぜ!」



長曾我部の地元、高知県が舞台となった今回。移動できる範囲は決まっており、そのラインを越えれば即失格となる。
すでに捕まった逃走者達は、外に置かれた牢獄で生き残った逃走者達の命運を祈る。

「……地元だから歩き慣れてはいるが…。それが吉と出るか凶と出るか、だな」

連中はショッピングモールの中へ逃げ込んだり、街のちょっとした物陰に隠れたりと、必死なのが窺える。
今回の逃走で俄然有利なのは森だろう。その小柄な体型と素早さはおそらくハンターにも引けを取らない。


(…俺や慶次はスタミナがある分、身長もデケェからどっかに隠れたりってのは難しい…)


「…となると、だ。俺は奴さんに見つからねぇよう常に動いてなきゃなんねぇっつーコトだよな?70分も動きっぱなしで大丈夫か、俺」

確かにコンサートなんかをする際には、ほぼ1日歌って踊り続ける。デカいイベントとなるとそれが2、3日ブッ続けで行われるのだから、単純に動く分にはなんの問題もなかっただろう。
しかし、今回は“常に追われている”というプレッシャーが重圧を増して逃走者達に襲いかかっていた。


「まっずいなー…みんなデパートん中に逃げたっぽい。ミッションきたらヤベェし、俺も行くっきゃねぇのかなー…」

建物内は物に溢れているため、隠れるには有利な場所であろう。現に比較的身軽な連中はいち早くそちらへ移動していった。
しかし、万が一見つかったが最後。相当落ち着いて逃げ道を選ばなければ、ハンターを撒くことは極めて困難だ。

「…一概に同じトコに逃げたって袋のネズミだよな…。俺はコッチの飲食街へ逃げるか」

背後を気にしながら、できる限り気配を消して走る。
目に見える人間全員がハンターだと思え。長曾我部は常に自分に言い聞かせていた。


逃走も2時間が経過した頃、全員の携帯にミッションのメールが入る。

【今から約15分後、ステージ内の港に100人のハンターを乗せた船が到着する。港入り口に設置された特設デートを閉門し、船とハンターの侵入を阻止せよ】

「おいおいおい、マジかよ…。100人って洒落になんねぇぞ…。でも、まぁ‥デパートより飲食街のが港に近いし……‥俺が行けってコトなんだろうなぁー…」

ヤダなぁ、めっちゃ怖ェし。わ、うわうわうわ、ハンターいんじゃん!いんじゃんバッカ、おま、しゃがめよ!見つかるだろ!と、さながらテンパった様子の長曾我部は同行しているカメラマンを軽くドツく。
そうしてなんとかハンターをやりすごした長曾我部は、目前まで迫っていた船を閉門したゲートによりシャットアウトすることに成功、ミッションは無事クリアとなった。


しかしそれからまた約数十分後、全員の携帯にメールが入る。


「な、に…」
「…真田幸村、……確保…」
「あー、ユキ捕まったかー」
「ちっ、彼奴は確か俺と同じ階に居た筈…!階を移動するのが賢明か」
「こぉーんなに早くに捕まっちゃって、バッカだな〜」

真田を筆頭に次々と確保されていく逃走者達。
ハンターの脅威を思い知らされた瞬間だった。


残る逃走者は、3人。


「慶次と蘭丸と、俺…か」

巡回しているハンターは、4人。
その中に、長曾我部の苦手なハンターも交ざっていた。

とあるスタジアムで行われた予選で、執拗に長曾我部をロックオンしていたハンターは、右目に眼帯、その上にサングラスというなんとも言えぬ風貌をしていたが、それを差し引いても見惚れるような容姿をしていた。
そのハンターに限り、『逃走者を発見する』と言うよりは『長曾我部元親を発見する』と言ったほうが正しいのではないかと思うくらい。そのくらい長曾我部だけを追い回していて。

(…アイツにだけは見つからねぇようにしないと…)

とにかく、要注意なのだ。
視界に入る入らないの問題ではない。同じフロアにいるだけで、なぜか引き寄せられるようにあのハンターが近づいてくることも何度かあった。それはもう、長曾我部にGPSでも付けられているのではと疑うくらいには。

なんとかミッションをクリアしつつ時間が経過するも、逃走者の体力は限界に近づいていた。
ちょっとした物陰に息を潜める森とは違い、場所を転々としなければならない前田と長曾我部は特に、表情が険しいものに変わる。


「いやー、キツいキツいとは前々から思ってたけど…っ、まさか、ここまでとはね…」

カメラマンに前田がそう漏らしたと同時に鳴り響く携帯。最後のミッションが、送信されていた。


「おぉー…きたねぇ、コレ」
「出た……脱獄タイム…」
「俺知ーらね!ココにずっと隠れてよーっと」

助けるも自由、放棄するも自由。
予選での難易度が高かったせいか、今回の牢獄の鍵は1つ。それも、まさに前田が現在いるフロアにあった。

「もしもし、チカ今どこ?」
『俺?俺は飲食街の地下』
「俺さ、鍵があるフロアにいるからちょっと助けに行ってくるからね」
『マジか。気をつけろよ』
「おっけーい……、あ!ヤバいよチカ!今一人ハンターがソッチに入ったっぽい!」
『おえぇ…、サンキュ、ちょっと移動する。頑張れよ!』
「チカもね!」

前田が全面ガラス張りのフロアから目撃したハンター。
そのハンターこそ、長曾我部の警戒していた人物だった。


「今の体力で、見つかった時にハンター撒ける確率なんてほぼゼロっスよ。……多分、ハンター的には上から下に調べるっしょ…ちょっと……、うわ、アイツじゃん最悪だ…」

長曾我部の狙った通り、ハンターは上の階へと上がっていく。地下を調べにくる前に、なんとか飲食街を脱出せねばならない。

「1階のエントランスって上の階から結構見渡せるようになってるから……お!ラッキー、非常用出口発見」


その頃、前田は無事手に入れた牢獄の鍵を持って逃走者が確保されている場所へと走っていた。

「あと、何分?…っ、あと1分30秒…」

外を巡回するハンターに気をつけながら、牢獄までなんとか辿り着く。

「おぉー!慶次殿!!」
「待ってろみんな、今開けてやる!」

残り時間20秒弱で開けられた牢獄から、逃走者達が一斉に解き放たれる。
メールでの吉報に逃走者は喜んだ。

それでも、凄腕のハンターに一人、また一人と連れ戻され、現在生き残っている逃走者は5名。


「公園の広場で敢えて一般人のフリとか、できねぇかなー…、無理だよなー…」

途方に暮れる長曾我部の背後に、確実に迫っている影があった。
まだ、ハンターは長曾我部に気づいていない。先に気づいたのは、長曾我部だった。

「ぅわ!まっずい!コレ見つかったら終わりだろ!ちょ、おいマジかあの眼帯ホント俺のこと好きな」

引力で引き寄せられている、と言っても過言ではない。このハンターだけが、的確に長曾我部の潜伏するエリアを巡回していた。

「予選じゃ撒けたけど…他と比べモンにならねぇくらい足速ェよ、アイツ。今の俺じゃ絶対捕まる。下手に動いて見つかるよりこのままやりすごしたほうがいいっしょ」

途中、このハンターに追われる別の逃走者を見て思った。「他とはレベルが違う」と。


「気づくなよ〜…そのまま通りすぎろ…」

祈る長曾我部に対し、現実とは非情なもので。


ハンターが、長曾我部をその目に捉えた。


「げっ!ヤベ、気づかれた!コッチくる!コッチくるってえええぇぇぇぇぇ!!!!」

人間の危機管理能力とは素晴らしいものだ。
体力の限界を感じさせず、全力で逃げる長曾我部はカメラマンも追いつけないほどに速い。
徐々に距離を詰められてはいるものの、上手くいけば撒くことも可能か、そう思ったのも束の間。

「はぁっ…!ちっくしょおおぉぉぉなんでアッチにもハンターがいんだよーーーー!!!!!!」

このまま行けば、挟み撃ち。
引き返してもどのみち捕まってしまう。

非常事態に怯んだ長曾我部を、ハンターは見逃しはしない。



「………捕まえた………」
「…っ、??!!」

いつものように軽くタッチ、ではない。
明らかに後ろから抱き締められて。

耳元で低く艶やかな声が、聞こえた気がした。










逃走経路、遮断しました





(え、なんで俺抱かれてんの…?)
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長い。この番組見たことないので、資料用にお台場編をようつべで見ただけです。
色々間違ってても勘弁してください…!!

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あきゅろす。
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