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君がくれた幸せの色
ガチャガチャをご存じだろうか。

200円を投入して(俺がガキん時は100円だった)ハンドルを回すとカプセルに入った玩具が出てくる機械。
まさかその中に小人が入ってるなんて夢にも思わなかった俺は当時高校2年生。今じゃ立派に大学生なんかやってる。





君がくれた幸せの色





少し大振りなカプセルに入っていた『元親』は、その愛らしい姿や仕草で俺を癒してくれた。その元親も諸事情でいなくなっちまったけど。
アイツを失った悲しみで屍になってた俺を見兼ねた神様が同情して新たな『元親』を寄越してくれたらしい。


「じゃあ元親、俺学校行ってくるから」
「やだ俺も行く」

掌サイズだった元親は次に会った時にはなんでか人間のサイズになっていて、おまけに俺よりデカくてゴツい。
それでも可愛く見えてしまうのは今までの元親のイメージと、デカくなっても変わらないその頭の弱さがあるからだろうか。

「…昨日もこのやり取りしたんだぜ?」
「だってヤだもん」
「だもんじゃねぇ、お 留 守 番 !!」
「やだやだやだ寂しいぃぃぃ」


人間サイズになって困るのが、ポケットやカバンに入れて連れ歩けないってことだ。
元親の兎体質はそのまま反映されているから(つか、デカくなっただけで中身はまんま元親だし)駄々こねられると本気で困る。そろそろマンションの大家から苦情がきそうだ。

「チカ」
「…っ、!」
「あんま騒ぐと追い出すって言ったよな?」
「だって!」
「前みたいに小さくないんだから、ちょっとだけ我慢しててくれよ」

両目に一杯涙を溜めて寂しそうな元親なんて見たくないけど、仕方ないじゃないか。カバンに入る大きさなんてモンじゃない、ましてやミテクレは普通の人間なんだから。


「はぁ…元親が前のサイズならなぁ」


不謹慎で我儘極まりないけど、神様ってヤツに愚痴らずにはいられなかったんだ。










「…………で、なにこれ」
「あ、政宗おかえりー」

今朝あんなに沈んでた元親は俺が帰った頃にはすっかり元気になっていて、部屋中を散らかして遊んでいた。


散らかして、遊んでんだよ。


掌サイズだった頃にも一度だけ、留守番をさせた時にハムスターよろしく散々散らかしてくれたことがあったけど、その時に厳しく叱ってから今まで、一人にさせて部屋を滅茶苦茶にしたことなんてなかったのに。

「…チカ…部屋を汚すなってあんだけ怒ったのにまだ堪えてねぇらしいな」
「あのね、かくれんぼしてた!」
「話を聞け!なんだかくれんぼって」
「俺がね、鬼!」
「一人かくれんぼで鬼もクソもねぇだろ」
「一人じゃないよ?俺が鬼だから探してた」

おいおいおい一人じゃねぇってなんだこの家には俺とお前しか住んでねぇはずだけど。他に誰かいました?まさかお前見えないモンが見えますよ的なそんな能力でも持ってんですか?

「俺がね、寂しいって泣いてたらね、遊んでくれるって言ったんだよ!」
「おま…っ!!誰か家に入れたのか??!!」

あれだけ誰がきても玄関開けちゃダメだって言って聞かせたのに!!しかもこんだけ散らかってるんじゃなにか盗られてても分かんねぇじゃん!!!!

「…チカ、今まで誰と遊んでたんだ?俺にも紹介してくんねぇかな?」
「だから今探してるんだよー」

呑気なもんだなまったく。警戒心なんてあったもんじゃない。おーいと探す元親に着いて歩くが、お前、テレビの裏とか冷蔵庫の隙間にはさすがに隠れらんねぇと思うぞ。


「あ!みぃ〜っけ!!」
「Ah?みっけって……‥」

「あーあ、みつかっちゃった〜」



ベッドの下。もそもそと這い出てきた元親が捕まえていた小人には見覚えがあった。



「……元親……」
「まさむね!」
「もとちか、政宗知ってるのか?」
「元親はもとちかで、もとちかは元親だもん!」
「んん〜?よく分かんないなぁ」

よく分からない。俺だって同じだ、できれば俺にも分かり易く説明してほしいくらい。

「本当に、元親なのか…?」
「そうだよー」
「なんで…お前、消えたはずじゃ…」
「元親が泣いてたから」

まさむね、元親泣かせちゃダメでしょ!って。大して迫力もないから笑うしかないんだけど。


嬉しいよ、また会えて。
喧嘩別れしたまま、もう謝ることさえできないと思ってたから。


「ごめんな、元親…」
「?」
「喧嘩したまま別れることになるなんて思わなかったんだ」
「でも元親がきたから大丈夫だよ?もとちかは元親だもん」
「そうだけど!…お前に、ちゃんと謝っときたかった」

誰かを好きになることの暖かさも、失うことの虚無感も、幸せの形も。お前じゃなきゃ、お前とじゃなきゃ知らなかったから。



「じゃあ、もう元親泣かさないでね」



嗚呼、それならば君はもう帰ってしまうんだね。
寂しくないと言えば嘘になる。だってまだ大きな元親との生活は慣れないことだらけで、たまに小さなお前が恋しくなるんだ。


「あれぇ?もとちかは?」
「もう帰った」
「え〜、まだ遊びたかったー!」

ひどく残念そうな顔をして、その後すぐに部屋の大惨事を見た元親は怒られると思ったのか大急ぎで片づけをしている。バカだな今更だろ、そこも可愛いんだけど。


「元親、」
「っ‥!ごめんなさい!」

「遊ぼっか、俺と」



嬉しそうに咲いた笑顔は、大好きだったお前と同じ。










夢か幻か、君が見せた懐かしい記憶でした





(ずっといつまでも、変わらない愛情を誓うよ)
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ちびガチャ!のダテチカで、大きい(普通の人間)チカとちびガチャ!のチカが会話しているお話、とリクエストいただきました。大きいチカっていつもの元親でいいのかな…と迷いましたがちびガチャ!設定でしたので最終話での元親と絡ませました。基本的に中身が同じ感じなのでどっちがどっちの台詞か分からない残念クオリティ……。

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あきゅろす。
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