別れ道(現代)
『政宗、今日はなに食べたい?』
『あー?つか久し振りにどっか食いに行こうぜ』
『マジか!やった!』
『…って言うと思って人気の店予約してんだよな』
『〜〜〜!!!!なにお前、好き!』
『Ha,当たり前だろ』
あんなに一緒だったのに。
あんなに想い合ってたのに。
いつから解けてしまったんだろう。
「政宗…なにか食いたいモンあるか」
「ありあわせでいいだろ、なんならコンビニ行ってくるし」
「…じゃあ、適当に作るな」
高校を卒業して自由な時間が増えた俺たちは、仕事がない日や夜はこうしてどちらかの家に泊まることが多くなった。半同棲ってヤツ。
始めは新しい発見だらけで、なんだか大人になれた気がして。幸せだった、確かに。
俺たちは明日も明後日も、こうして一緒にいるんだろうなって漠然と思ってたんだ。
「…なぁ、元親、」
「…なに、?」
「お前はさ、このままでいいと思うか…?」
「……どういう意味」
「そろそろ遊ぶのも止めにしてさ、「お前は遊びで高校ン時から俺と付き合ってたのか!!??」そうじゃねぇよ!!!!」
「…お前最近笑ってねぇって…、気づいてんの?」
「っ、?!」
「気ィ遣ってたんだろ、俺に」
「別にそんなことは、!」
「なくてもよ、…俺には、そう見えた」
そう言って少し俯いた政宗の顔は、見たことがないくらい悲しそうだった。だからなにも、言えなくて。
思えば短い時間だった。
同棲するには周りの目が厳しくて、だけど寝泊まりを繰り返すうちに増えていくお互いの私物に毎日嬉しくなって。苦手だった料理も上達した。
政宗が、俺の全て、だった。
今思えば、それがいけなかったんだな。
政宗がすべてになってしまったから、俺は俺のやりたいことができずに仕事と自宅を行き来するだけの生活。
休みの日には政宗がいて、給料もほとんどが2人分の生活費に消えた。
「ごめんな…もっと早くに気づいてやれなくて」
「や、…謝んな、っ!お前は、悪くねぇから‥」
男2人が泣いた。もっともっと話し合えば良かった。
所詮不安定なままの延長線だった俺たちは、いつかこうなる運命だったのかもしれない。
「いつかさ、俺らも嫁もらってガキ作って…、笑えるようになったらさ、」
「そん時は、いいパパになってまた会おうぜ」
だからそれまでは、君の中の一番でいさせて。
未だ泣き崩れる元親を、最後にキツくキツく抱き締めた。
「政、宗っ…」
「Ah?」
「ごめ、な‥っ!!」
「なんで謝んだよ」
愛してた。知ってるよ、そんなこと。
まだ若干鼻を啜る背中を見送った玄関は、いつもよりも冷たくて。
「気をつけて帰れよ」
「…あぁ、」
サヨナラ。またね。どうか元気で。
「ずっと、忘れねぇから」
「政宗、」
「ぶっちゃけまだ好きだから」
大丈夫なフリして、本当は強がってるだけの弱虫。
未練タラタラかよ俺、カッコ悪。
「っ、元親!」
「!、なに…‥、ゆびきり?」
「また、会えるよな」
最後に見た君はやっぱり綺麗で。
願わくば、繋ぐ小指が離れなければいいのに、と。
大好きな君はとても大切な思い出に変わる
(約束だよ、ゆびきりげんまん)
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この曲が好きで書いてしまった。幸せ話を期待された方は申し訳ない。
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