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反平和主義の暴動(学園)
喧嘩した。って周りから言わせれば「またか」って感じなんだろうけど、喧嘩した。

かれこれ半年前からお付き合いさせてもらってます、歩くフェロモンこと伊達政宗様と。
えぇ、もう軽く戦争でした。掴まれた右腕は青く痣にもなりました。ドメスティックな旦那様を持つと大変です。俺もアイツの鳩尾おもっくそ殴ってやったけど。

喧嘩の内容なんていつもあってないようなもので、楽しみにしてたプリン食ったとか録画してたDVD勝手に消したとか、笑っちゃうくらいペラッペラなんです。
ただ意地っ張りな俺達はごめんなさいが言えなくて、ヤキモキして、だからどうしようもなく暴力沙汰になってしまうのです。



今日も今日とて廊下を挟んでお隣のクラスからドス黒いオーラを垂れ流すダーリンはまだご立腹の様子。
俺は別に、そんな見苦しいことはしない。涼しい顔してシカト決め込んでやるんだ。

そうすると余計に政宗の機嫌は悪くなってまさに悪循環。いつも放課後になると迎えにきてくれた、優しい政宗も今はいない。
朝が弱い俺のためのモーニングコールも友達の慶次にかけてもらってるし、学校帰りにお互いの家で夜まで遊ぶこともなくなった。

キスとかセックスとか、なんでもない話だ。





「まだ冷戦中なの?」

慶次が言う。

「佐助と幸村も、政宗を宥めるのにいっぱいいっぱいだって困ってたよ」
「………………」
「政宗には元親しかいないんだって、…政宗が機嫌悪いのも、元親がなんでもないフリしてるから、」
「…慶次達には迷惑かけちまって、悪いと思ってるよ」


だけど、仕方がないじゃないか。


素直でない者同士が喧嘩をすれば、悲しいかなこんな結末になってしまうわけで。
どちらかが折れるまで続く冷戦は、大抵ならば俺よりも少し大人の政宗が先に謝ってくれるか、もしくは謝り易い状況を作ってくれる。

それがどうだ、今回はキレ具合が半端じゃないから俺としたら謝るどころか近付くことさえできない。
そもそも喧嘩の始まりってなんだっけ。それすらも忘れた。





1週間が過ぎて、2週間が過ぎて、気がつけば1ヶ月が過ぎて。俺の部屋から政宗の匂いが消えた。
携帯の着信履歴は慶次で埋め尽くされて、昔にくれたメールもどこかへ消えた。(保護し忘れててさ、俺のバカ。)
でも寂しくなったなんて今更言えなくて、長引けば長引くほど仲直りもしにくくなって。
よく聞く『自然消滅』ってこういう感じなんだ、って漠然と思ってみたり。

メールをするのが怖い。電話をするのは、もっと怖い。怖いけど不思議と危機感はなかったんだよ。多分、政宗は俺の前からいなくならないって考えがあったからだと思う。
…アイツが、クラスで可愛いって評判の女子と2人でカラオケ入っていくとこさえ見なけりゃな。


「…‥あ、」
「っ、!」

2人が店に入る瞬間、一瞬だけ目が合って。政宗は驚いたような顔をしていたけど、俺は俯いて足早に通り過ぎることしかできなかった。

(どうしよう、どうしようどうしようどうしよう!泣きそうだ!!)

そうして家に着くなり尋常じゃないくらいに泣き崩れる。生まれて初めてこんなに泣いた。
近くにありすぎて気付けなかった政宗の大きさ。俺はこんなに、アイツなしじゃ生きていけない体になっていたのに。


しばらく泣くとすっかりカラッポになってしまって、俺は空が明るくなるまで、ただボーっと天井を眺めていた。携帯の電源は切って、外界との繋がりを一切遮断する。
とうとう人間の三大欲求も俺の脳ミソから家出してしまって、下手をすれば呼吸すらも忘れてしまいそうな。
学校なんてもちろん行けなくて、水を飲んで風呂に入って眠る毎日。


時折思い出したように涙を零しては、貴方のことも、忘れてしまえたら、と。










きっと仲直りなんて一生できない





(携帯の電源を入れるだけで元通りなんて、なんでもない話だ)
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私も喧嘩しちゃうと自分から謝れない子です、喧嘩とかここ何年もしてませんが。

そして私も究極に病んじゃうと元親みたく抜け殻になります。それだけのこと。

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