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心臓。(現代)
ヤンデレ政宗










依存ってそんなに、みんなが言うほど可愛くない。

他人は本当の依存がどんなものか分からないから可愛いとか羨ましいとか言えるんだろうと俺は思ってる。


「元親?!どこ行くんだよ?」
「…便所だけど」
「…俺も行く」
「だから!便所にまで着いてくんなって何回言ったら分かんだよ!」
「っ、チカは俺のこと嫌いか…?」

あぁもう、これだからなにをするにも気楽にできやしない。
束縛とは少し違うけど、こうまで依存されると好きなことも十分にできないというか。





「…で?伊達ちゃんは相変わらず流行りのヤンデレなの?」
「いや、マジ当事者になったら分かるぜ?日に日に悪化してやがる」
「でもそれだけチカちゃんに首ったけってコトでしょ?」


政宗は俺の一つ下の地元の幼なじみで、昔から一緒っちゃ一緒だった。
よく連んで悪さもしてたし、政宗は年上の俺から見てもカッコ良かった。なにをしても輝いてて絵になるヤツだった。
同じ男としては悔しいけど、実際尋常じゃないくらいモテてたしな。

そんな政宗が変わったのは、俺が卒業して1人上京した頃。


『政宗君が大変だから帰ってきて!!』


電話をかけてきた母さんはあまりにも悲痛な声で。

確かに俺が地元を離れてからというもの、政宗からのメールや電話にはなにか違和感があった。
毎日毎日、どこにいるだの誰となにしてるだの。挙げ句の果てに今日はいつ帰ってくるって、まるで同居してるみたいな感覚。
そんな政宗が怖くなって、しばらくメールも電話もシカトしてたらこうなった。

久し振りに地元へ帰って見た政宗は悲惨だった。
顔はまるで病人みたいに青白くて、元々華奢だった体はガリガリになってて。…腕には夥しい数の傷跡が刻まれていた。
まだ鉄の臭いの残る部屋に吐き気がしたのを今でも鮮明に覚えてる。


「…ちか、?」
「お、前…どうしたんだよ、コレ…」
「ちか、ちか!ホントにチカなのか?!」
「うわ!なんだよ急に!」

寝ていたベッドから飛び出して俺に抱きついてきたから支えきれなくて倒れた。
政宗はお構いなしに俺の名前を何度も何度も呟いてて、あぁ、政宗が壊れたって、思った。

「俺もチカんとこに連れてって」
「は?お前学校あんだろ」
「辞めた」
「はぁ??!!辞めた?!」
「お前がいねぇとこになんか行く気になんねぇ」
「お前…それはさすがに、」
「したらメールも電話もシカトするし。俺、お前に嫌われたら生きてる意味なくなるし」
「大袈裟だろ」
「元親が好きなんだ。ずっとずっと、好きだった」
「っ、…ぇ、?」

力の入らない手で、余裕のない顔で、震える声で。
か細く縋ってきた政宗を振り解けなかった俺も大概バカだ。


お互いの家族には話をつけて、俺の暮らしてるアパートに政宗を連れてきたのは結構前のこと。
俺と暮らすようになってから政宗はよく笑うようにはなったものの、未だその依存具合が半端じゃない。

友達と遊びに行こうものなら全力で止められるし、じゃあ一緒に来るかと誘えば「誰かと話してるお前を見たら死にたくなるからいい」と返される。
前に1度だけ、政宗が昼寝してる間に抜けだして無断で夜中まで遊んだことがあったけど、帰ってきたら復活してたリスカとオマケの過呼吸で死にそうになってたからもうしない。
最近はようやく俺が仕事に行ってる間くらいは1人でも平気になってきたから、こうして仕事仲間の佐助に愚痴る毎日なんだけど。


「でもいいじゃん、伊達ちゃんち金持ちだから仕送りで仕事なんかしなくてもいいくらい貰ってるんでしょ?」
「政宗を金ヅルみたいに言うなバカ。アレは、政宗になにかあった時とか、政宗の薬代とかのために貰ってんの。生活費くらい俺が稼ぐし」
「あーらら男らし。そのまま伊達ちゃんのヒモにならないようにね」
「お前いっぺん死んでこい」


俺は政宗を利用しようとか思ってないし、政宗のヒモになるつもりだって更々ないのに。


「今度俺にも会わせてよ」
「お前精神的にドン底まで追い詰めそうだから絶対ヤだ」
「俺がその依存体質治してあげよっか?ショック療法でほんの少し手荒だけど」
「やめろっつってんだろ糞猿」
「ひどい!」
「どっちが!」

そんな感じで真面目にやんなくて上司にガッツリ怒られて1日が終わる。うん、今日も平和だった。





「ただいまー」
「チカ!おかえり!」

玄関を開ければ晩飯のイイ匂いとまだ幼い笑顔の政宗が迎えてくれる。
政宗は学生ン時から料理が得意で、基本的に器用だから家事全般は政宗にやってもらってる。…ほら、俺ってあんま、片づけとか気にしねぇし?
政宗もただ養ってもらってるだけじゃ申し訳ねぇって言ってたしな!


「…なんか、新妻?」
「は?誰が」
「お前」
「ふざけんな俺はチカに突っ込むほうだ」
「てめェ誰がそんな話しろっつったよ」
「…お前じゃなきゃ、ここまで尽くしてねぇよ」
「ぇ、?」
「お前は、俺のすべてなんだ。お前の一言で生きることも死ぬこともできる」
「政宗、」
「愛してる、…愛してるよ、元親…」



愛してる。



最近さ、俺もよく考えるんだ。

政宗がもし明日いなくなってたら俺も、政宗が俺にいつも言ってるように、死んでしまうかもしれないって。










きっと俺達は、この心臓まで分け合ってるに違いない





(ずっと2人で、同じリズムで)
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弱い政宗を書きたくて。
チカダテじゃないですダテチカです。

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