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狂気乱舞(現代)
好きすぎてどうしようもない人がいる。

名前や、どんな人かなんて知らない。もう何ヶ月も日の光を浴びていない自分に分かるわけもないけれど。
伸びきった前髪で視界はほぼゼロなのになぜだろう、君だけはなによりも早く僕の目に飛び込んでくるんだ。


星を観るために買った真っ黒な望遠鏡は、いつしか君しか映さなくなりました。
地上で光る、僕だけの星。


雨の日も、晴れの日も。決まった時間に必ずここを通る君。
どんな仕事をしているのだろう。スーツではないところを見るとアルバイトかなにかか。

話せばすぐに分かるであろうことまで逐一想像しなければならない虚しさ。日増しに肥大する感情がなんなのかハッキリと分かるんだ、例え君が僕と同じであっても。
モデル並のスタイルは平均身長を軽く超えているし、眩しいくらいの白い肌には不釣り合いなガッチリとした体型。
きっと、その艶やかな唇が紡ぐ音も低く、可愛らしいものではないのだろう。

それでも性別のリスクを上回るだけの魅力が彼にはあった。

プラチナに輝く白銀の髪は、いっそ標本にでもしておきたいくらいに美しい。
拡大ズームで見た表情はいつも明るく笑っていて、その碧く澄んだ瞳に吸い込まれそうになったんだ。


好き。愛しい。なんて安い言葉じゃきっと表せない。
もっと知りたい。もっと見ていたい。もっと溺れたい。もっと、狂いたい。

触れたいのに触れられない。
こんなに、傍に、いるのに。

止まらないのが恋だとするなら、僕が行き着く先は愛なのかそれとも。





今日もいい天気だと、いつもの時間にレンズを覗く。
特徴的な容姿は、後ろ姿ですぐに分かる。

「…………っ!!」

ただひとつ、大誤算だったのは。


「…目が合ってしまった……」


君が振り向いてこちらに気づいてしまったということ。君の驚いた顔がさっきから脳内をチラついて離れないんだ。
大きな瞳は更に大きく開かれて。空色の瞳は驚愕や戸惑いや拒絶やその他諸々をごちゃ混ぜにして淀んでいた。

警察に通報されるのは構わない。僕は彼になにか危害を与えたわけではないのだから大した問題ではない。
ただ、君がこの道を二度と通らなくなるんじゃないかって、そればかりが心配なんだよ。



遮光カーテンを閉め切って真っ暗になった部屋。
浮かぶのは君の顔ばかり。
いつも後ろ姿や横顔しか見れなかったから。
油断が呼んだ事故であれ僕には十分な収穫になった。

それからはひたすら自慰に耽る午後。
幼稚。それでいて滑稽。二酸化炭素と独特の臭いが充満したこの部屋で、君との行為に没頭する僕は一体どこまで狂っていくんだろうね。
自分から放たれた白濁だって、君のものだと思えば途端に甘い蜜に変わる。

「っ、はー…」

何度目かの射精の後。
絞り出した欲は思ったよりも大量で体に力が入らない。終始力んでいた脚の付け根は硬直していて少しだけ痛くて。


誰かが押したチャイムの音で現実に戻る。
間延びした音は僕の荒い息に溶けたけど。
扉を開ける気は更々なくて。

覗き穴からレンズを覗くと映る、君。



興奮に任せて外へ出た。
玄関先には、誰もいなくて。










僕は狂い、君は舞う。僕の妄想の中で





(永遠に、交わることのない2人)
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某曲を元に。まとまりなくってすみません。
語りの人物像はご自由に。

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あきゅろす。
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