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おかえり(戦国)
『しばらくの間、外交の関係で四国を留守にする。また戻ったら文を出そう、それまで待っていてくれ。』


淡々と書かれた文面に心なしか肩が下がる。
もう少しくらい、寂しいだのすぐ戻るだの書いてくれてもいいではないか。


「Hey,小十郎」
「なんでしょう」
「元親はどこへ外交とやらに出向いたんだ?」
「それを知っていかがなさるおつもりですか?」
「Ah?逢いに行くに決まってんだろ」
「では尚のこと教えられません」
「ってぇことはお前、知ってんのか」
「知りません」
「嘘つけ大方俺には黙っとけみたいなnuanceで事前に連絡があったんだろ」
「口が裂けても言いません」



ただ、本日の政務がすべて終了しました頃には、坊やも戻って来るかと思われますが。



そう言い逃げして部屋を出て行きやがったあのピザ野郎そんなハッタリが俺に通じると思うか。

とは言え溜まった政務を片付けなければ戦だなんだとなった時に大変なので、今日のところはひとまず無心で捌いていこうと思うわけだ。
そんな苦労も知らずアンタは俺の知らない土地で美味いモンでも食ってんのか珍しい魚釣ってんのか。俺とよく似た性格なんだ、クソ真面目に外交なんかするはずがねぇ。


こんな感じで気が付けばアンタのことばかり考えている。同じ離れているでも、四国にいるのと言語も文化も違う国にいるのとでは気が滅入るのも早いらしい。
アンタはおセンチな俺の気持ちなんかミクロン単位で分かっちゃいないんだろうが、日の沈みかけた夕刻なんて特にドンヨリするんですよ。
真っ赤な夕日なんてアンタの左目に酷似してて柄にもなく泣きそうになったりするんですよ。



独り寂しく黙々と片付けていれば、思いのほか早く終わってしまった。一度大きく伸びをすると背骨がボキボキと鳴いて。
茶でも啜ろうと立ち上がる。
同時に聞こえてくる、聞き慣れた掠れ声。


「おーい政宗ぇーいるかー?」


慌てて外へ飛び出れば、前に会った時よりも少し日焼けした、溢れんばかりの笑顔で元親が立っていた。

「なんで…アンタ、」
「あー…文書くよりも逢いに行ったほうが早いと思って、そのー、なんだ、」
「?」

後ろ頭を掻きながら不自然に視線を泳がせる。
不思議に思い覗き込めば、バツの悪そうな顔と目が合った。


「…嘘。ホントは早く逢いたかっただけだ」
「??!!」



急いで来たものだから折角買って帰った土産も忘れてきたんだと。
アンタがいるんだ、これ以上の上等な土産はないだろう。

早いとこ政務を終わらせておいて良かった。未だ顔を赤くする愛しい人をキツく抱き締めて、嗅ぎ慣れた潮の香りを胸一杯に吸い込むのだった。










おかえりなさい!!





(アンタが無事で本当に良かった)
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戦国って現代独特の胸キュンが上手くいかなくて難しいです。

伊達親という萌の境地に帰って参りました中村!ただいま!!

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あきゅろす。
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